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[コメント] サイドカーに犬(2007/日)

血液型A型
chokobo

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







僕は血液型など全く信用していないのだが、この映画にでて来るヨーコという女性は間違いなく血液型A型だと思う。その奔放さはいかにも映画的に表現されているのだが、竹内結子さんが演じるこの女性は明らかにA型だ。奔放のようで配慮し、一途で我慢強い、謙虚でありながら自分らしさを維持し、品がないようでセンスがある。こういう女性は世間によくいる。

そんなことより、この映画はもう少し奥深いことを言っている。

この映画は、自分を失いそうな30代の女性、薫が20年前に出会った女性のことを描いている。その女性は母親が家を出て行った後、突然訪れ幼い少女と弟を魅了してゆく。そして薫自身もいつの間にかこの女性(ヨーコ)同化してゆく。

20年前といえばくしくもバブル前夜。ソビエト連邦の書記長がゴルバチョフになり、ベルリンの壁が崩壊しようとする頃、日本は平和でありながら、現代の日本につながる負の遺産を生み出す伏線をあちこちに置いている。それが親子の関係であったり兄弟の関係であったりする。

連綿と続く親子関係はすでにこの頃崩壊し、今大人になった彼や彼女たちは父や母、あるいはその周辺の大人から伝えられた当時の認識を今咀嚼しきれずになやんでいる。今現在の薫が社会から逸脱しそうで悩んでいるのがそのことを物語っている。

この映画は当時の平凡な世相を描きながら、ヨーコ(竹内結子)という不思議な魅力的な女性を中心に子供の目から大人の世界を見る作品となっている。

最も面白かったのが樹木希林が演じる民宿の老婆だ。全く世間から隔絶されたような老婆が、一瞬にしてヨーコの素状を言い当ててしまう。この老婆はヨーコの存在そのものなのかもしれない。だからヨーコはこの老婆から言い当てられても不快な顔ひとつせず淡々と話しを聞く。

原作は読んでいないで、とても文学的なエッセーだ。だから映画になってもその魅力が十分伝わる作品に仕上がっていると思う。

ただ、残念ながら竹内結子さんがあまりにきれいすぎて、奔放な女性としてのキャラクターに今少し臨場感不足の点があったと思う。

(評価:★4)

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