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[コメント] ザ・マジックアワー(2008/日)

面白かった・・・が
chokobo

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







前作『有頂天ホテル』でがっかりさせられたので、今回もさほど期待していなかったのですが、前作よりはマシだったかもしれませんね。

最近の三谷幸喜作品は、その予算のかけかたや、舞台劇をそのまま映画にしたとうなくさい芝居が鼻について、どうしても馴染めない感じがしていました。その最悪の状態が『有頂天ホテル』だったと思います。

ただ、今回は”映画を愛する”人々が主人公なので、私的には、このパターンに弱いんですよ。映画人。映画好き。映画を愛する人々。そういう設定にとても魅力を感じます。

星護監督の『笑の大学』に大感動できたのは、あの映画で劇場が揺れるように笑いにつつまれるシーンがありますね。役所広司さんが涙ぐみます。ああいうシーンにとても共鳴するんですよね。泣いてしまいます。

今回の『ザ・マジックアワー』のテーマは”役者”ですね。出ている”役者”が充実しているだけでなく、その雰囲気や演技が素晴らしいんです。まず驚かされたのは西田敏行さんですね。いつも乱れた役が多い西田さんですが、今回はマフィアのボスです。これが実に似合っていて、しかも演技も渋く、ほとんどお笑いとは縁のない、真面目(?)なマフィアを演じています。もともと実力派俳優ですので、どんな役柄もOKな西田さんですが、今までで最も好感が持てる演技だったと思いました。『相棒 劇場版 絶体絶命!42.195km 東京ビッグシティマラソン(2008/日)』もそうでしたが、西田さんの渋い演技が、最近とても魅力的に感じます。

それと何と言っても佐藤浩市さん。彼は西田さんと正反対で、これまで比較的真面目な役柄が多かった。思い出しますが1981年に上映された『青春の門』。映画は最低でしたが、デビューしたての佐藤さんは、とても初々しくて素晴らしかった。

でもその後の佐藤さんは映画で代表作に恵まれませんでしたよね。『敦煌』もイマイチだったし、代表作といえる作品がありません。主役というよりむしろ脇役が多かったのではないでしょうか?

どうしても三國連太郎さんの息子さんというレッテルが大きくて、その影に踏まれているような地味さが残っていましたし、実際にその三國さんと共演した『美味しんぼ』でも、無理やりやらされている感じが見えてしまったような気がするんですね。

そんな中、彼の別のキャラを引き出したが三谷監督だったんですね。前作『有頂天ホテル』です。主役ではありませんでしたが、情緒不安定な政治家を熱演して、劇場を大いに笑わせてくれました。

そんな彼を今回の作品の中心に据えたのは、大変冒険だったかもしれませんが、正解でしたね。佐藤浩市さんなくして、この映画はあり得なかったでしょう。

この映画のキャラが、佐藤浩市さんのこれまでの映画の経歴と重なって、でもそれを笑い飛ばすような勢いがあって、とても好感が持てました。

先日『少年メリケンサック』も見たのですが、佐藤浩市さんの新しい面が見られて面白かった。その原点に三谷作品があることを、この映画で改めて認識することができました。

ただ残念なのは、映画全体が派手になりすぎて、どうしても舞台化してしまっている点が惜しいですね。三谷監督はもともと舞台劇出身なのでやむをえませんが、映画としての成功度では、やや見劣りする作品だったと思います。

辛口ですけどね。

2009/02/16

(評価:★3)

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