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[コメント] イースタン・プロミス(2007/英=カナダ=米)

両刀使いということだ。これは現実なのだ。
chokobo

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







あまり過激なことは書きたくありませんのですが、やはりデヴィッド・クローネンバーグとなると、かなり過激ですね。描写も過激ですがお話も過激。過激すぎてとてもとても辛くなる、そんな映画でした。

かつてのクローネンバーグ作品で私が接しているのは『裸のランチ』と『ザ・フライ』と『クラッシュ』。いずれも芳醇な描写とエロスが描かれている映画ですね。特に『クラッシュ』は際どかった。

しかし、晩年になってきて彼の作品はさらに深みを増し、そして見せる美しさと内面に突き刺さる恐ろしさ。そして救いのある映画になってきたんですね。ある意味、彼らしからぬ映画ですね。

この映画は間違いなく愛を描いています。そしてタイトルにあるような”約束”それは何に対する約束なのでしょう?

主人公のニコライ(ヴィゴ・モーテンセン)は自らの生い立ちを語るシーンで「自分に親はいない」と語ります。しかし、彼が読んだレイプされて子供を生み死んでいった少女と彼の境遇は重なっていたんですね。それが最後の最後の台詞で明かされますね。このシンクロが見事。素晴らしい表現。少女の涙にむせぶ声が、マフィアの世界で行き続ける彼の冷淡な姿に重なりますね。このラスト。素晴らしいシーンでした。彼は故郷に約束したんでしょう。だから赤ん坊を殺せなかった。

この映画の光と影が見事に重なるシーンがありますね。親(ボス)に命じられて赤ん坊を殺そうとする息子キリル(ヴァンサン・カッセル)にニコライは愛情を与えます。そしてそれを救おうとする助産婦アンナ(ナオミ・ワッツ)にも愛情をささげます。

彼は両刀使いだった!

というよりも、自らの境遇を肯定しつつ、自らの生きる道に愛情を注ごうと努力するわけですね。この表現も見事です。素晴らしい終わり方でした。

それにしても、見事な俳優陣だった。見事です。

何よりも何よりもアーミン・ミューラー・スタールの演技は見事!

あのやさしい笑顔がマフィアのボスとは・・・とても思えませんが、その抑えた演技が見事ですね。そして冷淡で感情を表に出さない。そんな凄みが伝わりますね。

それからそれからヴィゴ・モーテンセン。すごいですね彼は、素晴らしい演技!

ロード・オブ・ザ・リング』にも出ていた方なんですね。

でも今回の役はロシアの運転手、そしてマフィアの世界を彷徨する、芯のある男の役。見事でした。こんなに上手な方だとは知りませんでしたね。

驚きました。

2009/8/3

(評価:★4)

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