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[コメント] 帰って来たヨッパライ(1968/日)

フォークルが求めた大島渚がこれだった。表と裏の物語。大島渚監督ご自身も一瞬出演されていますね。
chokobo

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







冷静にこの映画が作られた系譜を読み取ると、まず大島渚監督の位置づけとして、この当時はある程度できあがっていた、ということですね。

ヤバイ監督だ、というレッテルの中で前作かなりヤバい『無理心中 日本の夏』を撮っていますね。ここで彼は抽象表現という表現主義に走ります。

内容もさることながら、出演者の配置とかモチーフとかを自分なりに表現する。大島渚らしさを前面に出そうとしていることがうかがえます。

そして当時大ヒットしたタイトル曲にあわせて作ったこの映画は、タイトル曲とは全く無縁のものとして表現手法だけを追求しているように思えるんですよね。

それ即ち「破壊」です。

映画という表現手法を脱却して、主人公たちのイメージすら無にしてしまう強引さ。

これがこの映画の主題だと思われます。

そしてご自身がテレビのドキュメンタリーなどでもっとも力を入れていた朝鮮半島問題をこの映画に投影させることによって、より一層映画の主題から離れようとする。

かなり開き直った作品と言えるでしょう。

そしてこの手法が映画の最先端を走るものとして受け入れられるや、その後大島渚監督は一気にベーシックな作品へと向かいます。

絞死刑』をはさんで『少年』あたりになると、完全に基本形ですね。

この表現手法については、彼のスタイルが確立する前夜、という意味で面白い作品だなーと思いました。

2010/11/03 自宅

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)水那岐[*]

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