[コメント] ブラックホーク・ダウン(2001/米)
『地獄の黙示録』と『フルメタル・ジャケット』を足してソマリアに配備した作品か?
まずリドリー・スコットについて語らなければなりません。彼は職人です。自ら創造力を発揮するというよりも与えられた題材を最大限マックスの状態で表現する。それがロンドン王立美術大学を卒業してハリウッドに招かれた者の立場というものですね。彼の作品にはある種のプライドが感じられる。従って前作『グラディエーター』もこの作品も、この後の『ハンニバル』も徹底した現実主義を貫いて原作や脚本にある事実をそのまま表現しようと挑戦しています。
さてこの作品は戦争表現という意味では、すでに風化しているベトナムというカテゴリーから脱却し、比較的最近の事例を扱っています。なぜそうなったか?これがアメリカの良い面ですね。作用と反作用。戦争主義、世界の警察などアメリカという国家の放漫で思い上がったようなおごりの部分を肯定も否定もせず淡々と描いています。この点が『フルメタル・ジャケット』的。
そしてこれもまた歴史的な観点から見れば全く意味のないもの。戦争そのものが意味のないもの、という解釈からすれば、この映画で戦場に孤立する自信満々の兵士達の姿は、ベトナム戦争でいう『地獄の黙示録』とも言うべき者達でしょう。それは狂気です。
意味のない狂気。これが戦争の現実なんですね。報道される大統領のメッセージは茶番であって、実際に戦場で戦う兵士達にとって現場とは正に意味なき狂気との戦いなのですね。
おしまい。
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