『夫婦善哉』に続いてアドリブで触りまくる森繁の毒牙に掛かる淡島千景が今回もいじらしい名演。しかし流石の森繁も八千草薫さんには手が出せなかった模様。

同じく『夫婦善哉』に出演、淡島の父役だった田村楽太が春団治を嗜める車夫の役で登場、素晴らしい味を出している。彼と森繁が掛け合うジャン・コクトーばりのラストシークェンスは少ししつこいがその奇抜さは特筆すべきもの。

長谷川幸延の原作、或いは劇作家の渋谷天外と木村の脚本が、春団治の生き様を全く肯定していないところもいい。半ば諦め気味に、そして自嘲気味に「芸人というものはこんなもんやでぇ」と開き直っているところに好感を持てた。