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[コメント] 任侠列伝 男(1971/日)

総長賭博』のコンビだな、と頷きまくりの90分。
町田

総長賭博』で若山富三郎が果たした役割を今作では大映出身の菅原謙二が担っている。自分はハッキリ云ってこの人と田村高広特有の、恐らく阪妻さんを意識したんだろうと思われるが、鼻の穴を広げて口をへの字に結ぶ時代錯誤な大見得が大嫌いある。田村は『日本侠客伝』の一作目、菅原も『昭和残侠伝』他数作の東映任侠に出演しているが、この二人の硬直した演技は粋や洒脱、或いは艶を旨とする任侠映画の世界観にはあまり相応しくないように思われる。特に菅原は意地を通して殺される(=殴り込みのきっかけになる)役回りが非常に多く、彼が東映任侠史上最も影の薄い善玉の一人であることはほぼ確実であろう。

実際本作でも鶴田の説得を受け改心し悪玉・遠藤辰雄との対面を決心した矢先あっさりと謀殺されてしまっているのだが、その死に際がまぁ良くない。事切れた瞬間にでかい鼻の穴が「フガッ」と鳴ってしまうのだ。これには興醒めした。

とは云うものの、流石笠原脚本である。今回も非常にロジカルに義理と人情の相克を描いてみて見るものをドキドキさせてくれる。山下演出も冴え渡り、斬り込みシーンの豪華さ贅沢さには目が眩む。特に心底憎らしい汐路章八名信夫曽根晴美が演じた三人組の無法者が、鶴田浩二、高倉健に切って捨てられるシーンのカタルシスたるや並大抵のものではなかった。その高倉健演じる助っ人組長の造型たるや素晴らしく無口で頑迷な九州男にハードボイルドな哀愁が漂っていた。高倉と複雑な関係にある伊吹吾郎も爽やかな役回りで、『緋牡丹博徒』シリーズの不死身の富士松を彷彿とさせる全身総刺青での乱入シーンはいかにも華々しかった。

藤純子は作品によって美女にも馬面の醜女にも見える女優であるが、本作での美しさは他の作品の追随を許さぬ程であった。

(評価:★4)

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