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[コメント] 息子のまなざし(2002/ベルギー=仏)

全編ハンディカメラで、しかも切り返し無し。音楽も一切無し。眠くはならなかったが、目が痛くて敵わん。
町田

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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手法として面白いし、テーマにも沿っているのだが、けして観客には優しくないわな。本当に厳しいよ、この監督。ハンディが振り向く度にピンボケが起こって目が疲れる。

主人公のオヤジと元妻の、少年に対するスタンスの違いが興味深かった。実際、あんなもんだと思う。でも妻は新しい子供を身ごもってるんだよね。オヤジは云うまでもなく、男だから、しかもブサイクで、眼鏡も遠近両用だし、前の奥さんみたく息子を持つことはもう出来ない。俺も息子が欲しい。

でも、オヤジが少年を手元に置こうと思った理由は、そればかりじゃない。オヤジは自分の息子を殺害した少年をも赦してしまえるような究極的な寛容さを、自分が持ち合わせているかどうか、確かめたかったのではないだろうか。彼は職業訓練工の講師をしていて、世の中のあぶれ者として、冷たい視線に晒される子供たちをたくさん見て来た。だから、「俺だけは奴らの良き理解者でありたい」、と常々思っていたはずだ。彼がこう思うのは偽善でもなんでもない。偽善というのは思ってもないことを口にすることで、実際にそれをやろうとしている彼は偽善者ではない。

それでも、人を赦す、というのは難しいことだ。相手が自分の罪を厳粛に受け止めているウチは「最期の良き理解者でありたい」と本心から思えるのに、相手が、ほんの少しでも、それを忘れて平安な状態になると、激しい憤りを覚えてしまう。個人的に一番印象に残ったのは、少年が車の中で寝てしまうシーンより前の、少年が更衣室で口笛を吹くシーンだ。たった口笛を吹いただけで、少年に対する怒りが燃え上がってしまう。オマエに口笛なんか吹く権利はないんだ、とそれが理不尽だということは判っていても、そう、思わずにはいられない。

鏡を睨むオヤジ。あんた、あの時、自分と向き合ってたんだよな。

(評価:★4)

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