[コメント] 黄色い涙(2007/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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限界を知り、夢を捨てたかに見える章一(相葉雅紀)、圭(大野智)、竜三(櫻井翔)だが、彼らの人生はこれからまだまだ続くのであり、その夏の日に、彼らが夢の向こう側に見ていた理想は、カタチを変えて、またすぐに彼らの前に現れるだろう。何故なら、それが生きていくということだから。
商業的成功を捨てて描き綴られる栄介(二宮和也)の理想の漫画とは、そんな4人と同じ生き方をする全ての人々の、ささやかな理想と共鳴しあう作品となることだろう。もちろん、祐二(松本潤)と時江(香椎由宇)夫婦の理想とも。私は、この物語の哀切の向こうに見える、そんなポジティブさが大好きだし、映画からもしっかりとそのメッセージは伝わってきた。
残念だったのは、若い役者たちに平成的な豊かさと軽やかさがさ自然と滲んでしまい、どこまでいっても彼らの置かれた状況の切実さが、周到に準備された昭和の背景と遊離し続けて見えたことだ。もっと簡単に言ってしまえば、彼ら(男も女も)の一挙手一頭足から昭和的貧乏臭くささと、その裏返しとしての希望が漂ってこないのだ。
原作者の永嶋慎二が生きていれば70歳、脚本の市川森一は66歳。彼らが今の消費社会の形成期を推進し、あるいはその中でたじろぎながら生きた世代なら、47歳の監督の犬童一心はその変化を積極的に享受し成長した子供の世代。そして、二宮和也ら若い俳優たちは、永嶋たちからみればすでに完成された強固な高度消費社会に生まれた孫の世代だ。
こんな世代論で割り切ってしまうのは、いささか乱暴かもしれない。しかし、映画を観ている間ずっと、言葉では上手く説明できないような時代感覚と青春観のギャップを感じたのも事実だ。いっそのこと、まったく新しい脚本で、平成版「黄色い涙」を作っていた方が良かったのではないかとさえ思ってしまった。
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