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[コメント] ゼア・ウィル・ビー・ブラッド(2007/米)

大地の血脈を我がものにせんと格闘する石油屋と、神の血肉を騙り民の頭上に君臨せんと画策する牧師。その言動がいかに独善的に見えたとしても、土地や心を差し出す者たちもまた、いくばくかの恩恵にあやかるのであれば、とりたてて人から攻められる存在ではない。
ぽんしゅう

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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もし、彼らが誰かの怒りをかうとしたらそれは人ではなく、まさに人知を超えたものの怒りであろう。冒頭から漂い続ける不穏さが、ついに大地と神の怒りと化して噴出する油井炎上までのなんと不気味で神々しいこと。まさに、怒髪天を突くとはこのことかと思わせる大地からの戒め。

不謹慎を承知でいうが、以前、夜の火災現場に遭遇したことがある。暗闇で燃え上がる木造家屋。すさまじい上昇気流にのって火の粉が漆黒の空へと舞い上がり、やがてキラキラと降りそそぐさまの何と幻想的で魅惑的だったことか。一旦、生き物のように「動」と化した自然には、人間を圧倒する不気味な「美」が確かに存在していた。

大地と神の怒りの洗礼を受けたあと、物語の軸は石油屋と牧師の確執へと向かいはじめる。しかし、二人が背負った「生き方」の背景にいかなる家族の歪みをにおわせたところで、前半で提示された物語の不穏さのスケールに比べ、所詮は人と人との軋轢である。分岐となる頂点へと至る演出があまりにもにみごと過ぎたたという不幸な理由もあいまって、後半は山師どうしの偏執的で個人的な意地の話しにおさまってしまった。

とはいえ、魅力的なムードを醸す映画であったことは間違いない。

(評価:★3)

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