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[コメント] ハンナ(2011/米)

16歳で迎えた第二の出生が、人間としての社会デビューでありながら、最も反社会的な「人間」の誕生であるという悲劇。善と悪の危うい二元論が支配するなか、獲物を撃ち損じることを良しとしない少女の行く末に思いを巡らせてみれば、なかなかに切ない話である。
ぽんしゅう

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







細い空気孔を潜り抜けハンナ(シアーシャ・ローナン)は、モロッコの荒涼たる砂漠に頭から顔を出し16歳で初めて外の世界を目の当たりにする。ハンナが人として社会に産み落とされた瞬間である。そして、ハンナは旅のなかで人としての感情を身をもって育んでいく。

終盤、マリッサ(ケイト・ブランシェット)と対峙したハンナは、遊具のトンネルを通り抜けたその先で彼女の使命を成就する。無垢な少女が本来の、戦闘という単一の目的を植えつけられた道具として、再度この世に誕生した瞬間である。

人間性の体得と非人間性の実践。「善」を遂行する者の行為が、すべての場面において常で善意に端を発しているとは限らず、「悪」を実践する者の根拠が必ずしも悪意にあるとは言い切れない現実世界において、人間の感情を保ちながら非人間性を生きなければならない少女の運命。実に切ない誕生物語ではないか。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)ペペロンチーノ[*]

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