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[コメント] 超能力研究部の3人(2014/日)

この映画の「画」は常に客観的視線を意識させることで観客に物語への参加を強要する。観客が体験するのは、嘘(芝居)が物語になる過程で、観客は嘘を仮想現実として得心するために、さらに自分に嘘をつくということ。ドラマの出来不出来に対して観客は共犯者なのだ。
ぽんしゅう

3人の少女たちは、「物語を撮られるための物語」「物語として撮られた物語」「物語ではない別の物語」という3つの嘘(芝居)をつく(あるいは、すべて事実であるとも言える、又は言おうとしている)。ただ、どの物語にも私は共感しきれなっかた。なぜなら、私にはこの少女たちの物語を補うだけの、いかほどのイメージも喚起されなかったからだ。

圧倒的に面白かったのは芸能事務所の統括マネージャー(山本剛史)の逸話だ。撮影現場というある意味で思考が狭窄的になる場で、必然のように生じた問題に、いかにも業界人然としたキャラクターの人物が、期待どうりの発言を繰り返す。そんな、山本剛史の熱演によって呼び起こされた私の芸能界イメージによって付加された嘘(思い込み)が、この傑作シーンを成立させたのだ。

映画(物語)が面白いか、面白くないかの責任は、制作側だけでなく、観客も応分に負っているという事実があらわになった瞬間だ。このことだけでも、私には価値ある映画体験だった。

(評価:★4)

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