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[コメント] 十年 Ten Years Japan(2018/日)

この企画は若い作家にとって意義深くとても貴重なチャンスのはずなのに。がっかりしました。どの作品もアイディアに乏しく、語り口(作法)もありきたり。何よりも、たとえ答えが間違っていようが自分の思いを伝えたいという意志や気迫をまったく感じませんでした。
ぽんしゅう

●PLAN75 (早川千絵監督)・・・★★

老人医療と介護と離職、限界集落と高齢ドライバー、認知障害、選択的尊厳死。そして少子社会。作者は姥捨て伝説に始まるコミュニティーと生産と消費という“人が生きる”ための古くからの課題をどう考えているのだろう。感傷的になるだけで何も語らない。この問題は「10年」を待つまでもなく、すでに現実。

●いたずら同盟 (木下雄介監督)・・・★

システム化やマニュアル化に対して個性の連帯で抗うことで“何か”が生まれると言いたいのでしょうが、“何か”が抽象的なので何も語っていないに等しい。物語が型式的で退屈なのは作者が「画一化」に対して型式的にしか抵抗していないからだ。怒りや恐怖が足りない、本気度を感じない。

●DATA (津野愛監督)・・・★★

杉咲花田中哲司という役者の力で「娘と父」の物語を紡ぐ最もオーソドックスな語り口なのだが、いかんせん父も気づかぬうちに「娘」が「女」なるという成長の葛藤が伝わってこない。「DATA」を使った過去と現在の間に存在する「時間」が描けていないからだと思う。

●その空気は見えない (藤村明世監督)・・・★

「見えないもの」「見ることができないもの」を“音”を使って可視化する試みがこの作品の肝なのだから、徹底的に“音”のドラマに収斂すればいいものを(アニメーションなんてあり得ないでしょ!)、あまりにも“音”の扱いが雑。ラストショットは、ありきたりの「画」に逃げず、何とか「見えないもの」を見せないと意味がない。

●美しい国 (石川慶監督)・・・★★★

すぐ身のまわりに“事実”がありながら、ほとんど当事者意識の持てない、どこか遠いところで起きている「我が国の」の戦争。集団的自衛権という同調圧力のもとに地球の裏側へ送られる日本の若者たちがいるという想像に難くないお話し。ああ、あの『愚行録』の監督さんだったんですね。さすがというか、本作のみ鑑賞に堪えられました。

(評価:★1)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)ダリア[*]

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