[コメント] ペパーミント・キャンディー(1999/日=韓国)
将来は美しい花を撮りたいと言った青年のカメラには、悔悟の残像しか焼きつけられていなかったのだ。そのフィルムを遡る残酷な旅。20年かけて破綻の道を歩んできた男は、少女との約束も果たせなかったことに気づいたときフィルムとともに自らを捨てたのだ。
見終わって唖然とした。
キム・ヨンホ(ソル・ギョング)の最後の20年間の人生は、私のそれとほとんど時代をともにしている。同世代の韓国の人々は、何と生きにくい時代を生きてきたのだろう。北朝鮮との緊張関係。軍事政権下での不自由な日常。この悲惨な破綻物語の裏には、そんな時代の影が張り付くように存在している。
同じころバブル経済を謳歌し、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」とおだてられ、終わりなき発展を無邪気に信じつつ過ごした私には、本当の意味でイ・チャンドンが描こうとしたキムの生きにくさを理解できるはずもない。
唯一、人生の貴重な時間を理不尽にも奪われた北朝鮮拉致被害者の多くが私と同世代であり、実は南北の緊張と軋轢が引き起こした不条理は当時日本で暮らす私の身にも起こりえたのだという事実をやっと今になって知ることでぐらいしか、あの時代の緊張感を理解できないでいる。
そんな自分が僭越にも、この作品を理解した気になって絶賛などできないのだが、私と同世代の韓国人たちへの労いの意を込めてこの評価にさせてもらうことにした。
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