アンドロイドみたいなジュード・ロウとお人形みたいに美しいニコール・キッドマンでは恋愛そのものも絵に描いたような嘘っぽさが漂ってしまう…。私は一目惚れはあると思うし、それだけで恋に落ちる事もあると思う。一つの胸焦がす思い出だけで生命力が漲るのもよく分かる。その蜜のような思い出が薄れた時には写真を見つめ思い出をまた辿る。なんてロマンチックで美しい恋なの！って胸の前で手を組んで目を潤ませたいところなんだけど、なぜかそこまで感情移入出来ない。恋愛自体がどこか嘘っぽいから。そして再会を果たした時のシーンもイマイチ。別に劇的な感動のシーンでなくてもよかったけど、あれじゃあまるで昨日まで会ってたような雰囲気。何年間も思い続け、帰りを待ち焦がれていた女の顔ではなかったよ。あの美しい顔をぐちゃっと壊して泣いてこそ、そこに血が通うような気がするんだけどなぁ。インマンは疲労困憊、立ってるのもやっとって状況だったからあれで仕方ないだろうけど。それなのに、再会の夜のあの生々しいシーン。あんなの本当、余計。二人だけの秘密にしてやれよ。カメラは必要ないだろ…って興ざめもいいとこ。そういうところだけに血を通わせているからなお更あのシーンが浮いてみえる。

それに比べてナタリー・ポートマンの演じたセーラという女性。こちらには感情移入しまくって思わず目頭が熱くなるものがあった。別に欲求不満だった訳じゃない。寂しさを紛らわす為じゃない。ましてやインマンのかっこよさに目が眩んだ訳でもない。ただ頼れる存在を隣に感じ、その温かい胸に全て身をまかせ、安心して眠りたかっただけなんだ。それをインマンのヤツ「僕には好きな女性がいるんだ」ってそんな事どうでもええんじゃ！アホタレ！セーラだってお前なんか好きちゃうわ！戦死してしまった大事な旦那が忘れられず、ずっと胸を痛めているのに！女心の分からないアホだクソ。

それからレニー・ゼルウィガーには本当、完敗。くっそー。なんて演技するんだよ！って本当に感動してしまった。クソ親父を嫌いつつも、心底憎めない。そういう微妙な子供としての心情やほのかな恋心、ああすごく分かる！ってとても共感出来た。決して美人とは言えないんだけれど、人を惹きつける魅力のある女優だなと思う。

主役の二人にもっと血が通っていたならば、本当に良い映画だったと思う。残酷なシーンもあったけど、それを敢えて隠さないところも良かったし、偽善という言葉は嫌いだけどそういう事も感じなかった。長さもあまり感じなかったし、良いところが沢山あっただけになんだかもったいない。