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[コメント] 頭上の敵機(1949/米)

グレゴリー・ペックの顔を見てはいけない。正しく「兵士を見よ」なのだ。
ヒエロ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







僕は自衛隊とは直接縁もないし、知り合いに現役自衛隊員は居ない。ただ、実の父親が元空自の一佐だか何だかつうのは、ウチの会社の役員だし、義理の父親がC-1パイロットだったというのも友人だし、防大を出たが何故か家業のコロッケ屋を継いでしまい、今はコロッケを揚げている同級生はいる・・・これが旨くて、TV取材も結構受けてます・・・とは、どうでもいい話ではある。

ところで、グレゴリー・ペック扮する准将(にしては、えらく若いが)の、自尊心は見習いたいと、素直に思う。まぁ、これも本当の戦争や兵士の経験のない者の戯言なんでしょうが。サン=テグ・ジュペリの著書「夜間飛行」の中に、「部下の者を愛せよ。ただし、それと知られずに愛せよ」という一説がある。サヴェージ准将の言動を見るうちに、この一説が僕の中で蘇ってきた。

杉山隆男氏の空自ルポ「兵士を見よ」を読むと、空自組織の硬直度や、身を捨てて国を衛ることの中にあっても、結局は「個人の生活の糧」のための部分もありぃの、でも社民党一派はいけ好かない部分もありぃの、・・・なんて矛盾を抱えながらでも、現に命を張っている人々が居ることも、ちょっとは知ることが出来て、「他人を守ることが、結局は自分を守ることに繋がる」のだ、と自分で納得している。

翻ってこの映画、確かにサヴェージ准将の管理方式は、厳密に任務を遂行すること一点に絞られているように見えるが、「兵士を見よ」や「夜間飛行」に描かれた、《立場ごとの役割や譲ってはいけない幾つかの事柄》について、結構、同じ事を言ってんじゃないのかと思う。 ただし、そのことを表現するには、グレゴリー・ペックの顔が良くない。いや、良いんですけどね、実際。僕より数段いい。当たり前か。つまり彼はハンサム過ぎる(僕は三枚目過ぎる・・・これもどうでもいい)。彼の苦悩の表情は、相手役の美人女優に向けられることで、初めて苦悩感が見る者に伝わるわけだが、ヒロインいないじゃん!この映画。そりゃ、伝わらんでしょ。特に女性には。

原題の『Twelve O'clock High』は、航空用語の「12時方向上」という意味だが、これって「目の上のタンコブ」と和訳できる・・・と思うのは、僕だけか? つまりは、部下から見て目の上のタンコブたる指揮官は、常に厳密さを要求され、また下に対しても常に厳密さを要求するが、結局それは、部下を殺さないためのことであり、それを貫けない(ある意味自分の気持ちに甘える)ものは、守るべき者さえも犠牲にしてしまう・・・、という事に繋がるのかなぁと。グレゴリー・ペックの顔を気にしない(どうせ勝てないので)事で、そこまで深読みできる、それなりに感慨深い映画でした。

これって深読みしすぎなのかを、実務経験がおありの、りかちゅさんに、一度ご意見を伺う事ができると幸いですが(笑。

でもね、岐阜の航空祭で、F-15JのAB全開垂直急上昇なる機動飛行展示を見たときには、「おおぉぉぉ〜、俺もあれに乗って、一回吐きまくってみたいぜ!!!(窒息死するけど)」と思ってしまうし、まぁ、「生まれ変わった暁には、絶対ファイター乗りになるっ!・・・実際なれんだろうけど(笑」なんて真面目に考えてるタダのアホウかも知れん。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)ぽんしゅう[*] りかちゅ[*]

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