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[コメント] スターリングラード(2001/独=米=伊=アイルランド)

いつもはツルンとした冷たい2枚目のロウが、極限状態で敵を仕留める狙撃手。彼とエド・ハリスとの静かで熱い闘いに息を飲んだ。でも、ハリスやワイズはロウとファインズの背負った運命の皮肉を描くための存在だったのではないだろうか。
kinop

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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私の印象ではジュード・ロウは、生活感のないツルンとした冷たさを感じる2枚目スターだった。『A.I.』や『ガタカ』の役回りに見られる人形のような無機質な美しさが彼の魅力だと思っていた。ところが、この作品で彼は極限状態の中で命をかけてドイツ兵を倒す泥まみれの狙撃手。目は落ち窪み、髭は伸び放題、髪はぼさぼさで、今までのイメージとは全く違う。それで良くないのかというと、これがすごく良いキャスティング。この映画を見た後、彼以外の配役は思いつかなかった。

彼は田舎出の兵隊で、前半は捨て駒として命を捨てることを命じられる。所や設定は違うが、まるで『プライベート・ライアン』のような戦闘シーンで死と隣り合わせということを実感させられた。偶然、ファインズ演ずる政治委員と出会い、彼の前で狙撃の腕前を見せたことから英雄に仕立て上げられる。ロウもファインズも始めは浮かれるのだが、ロウにはそれが重荷になり、ファインズは最後にはそれで身を滅ぼすことになる。しかし、これは表面的で実のところ、アノー監督はこの2人の歩んだ運命の皮肉を描きたかったのではなかろうか。これは、ワイズ演ずる美しい女性兵と出会ったところから始まるのだが、ファインズは彼女に惹かれ愛されたいと思うが、彼女はロウの素朴な素顔に惹かれていく。それがやがてロウにとっては戦う意味となり、ファインズにとっては嫉妬となり満たされない心からロウが恨めしい存在になる。ここで彼女がファインズを選んでいれば結末もがらっと変わっていただろう。

この映画の見せ所はもちろんエド・ハリスとの静かな対決である。数センチ数ミリの動きが生死を分ける狙撃手同士の闘いは、静かだがピンと張り詰めた空気を感じさせられ息を飲んだ。ハリスが如何にもドイツの一流狙撃手といった感じで泥まみれのロウと違い、常に整った軍服に身を包み決して慌てることのない冷徹さを感じさせた。ハリスの迫力と先の不幸を予感させるロウの描き方が、より一層緊迫感を増したと思う。ロバと狼の会話やハリスの存在で、てっきりジュード・ロウが悲劇的な最期を遂げると想像したのだが、ワイズは命を取り留めロウに再開するシーンで映画は終わった。

やはり、最初に書いたとおりこの映画はロウとファインズが背負った運命の皮肉を描いていたのではないだろうか。ワイズやハリスはそのための存在だったと思う。私としてはそう思ったが、皆さんはどう感じたのでしょうか?

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)G31[*] アルシュ[*]

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