[コメント] アパートの鍵貸します(1960/米)
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自由の国アメリカ、権利の国アメリカ、裁判の国アメリカ、プライバシーの国アメリカ。そんなアメリカのニューヨークに勤める主人公(ジャック・レモン)は、自分の部屋の鍵を貸す・・・。
一応それは出世という名目で納得させているかのようである。しかし、かのアメリカで出世のために自分の部屋を貸すというのは、貸す立場としては、私はどうも納得できない。
当の主人公も「また出世?あら、そ。」てな感じで出世欲をほとんど感じさせない。別の面から言っても、上司に弱みを握られているわけでもないし(弱みを握っているのはむしろ主人公)、上司と親友もしくは腐れ縁のなかでもない。要するに主人公が自分のプライバシーを犠牲にまでして部屋を貸す理由などみあたらないのです。
以上を考えると、「出世」という口実は、主人公というよりは、「部下の出世」と「自分の不倫」を同一次元におく「上司」の自己弁護から出ているように思われる。もっというと、実力主義のアメリカで「出世」があらゆる不倫理を浄化する口実(大義名分)としてまかり通ってしまっていることも意味しているようだ(これが裁判の多さの一要因になっていると思う)。すなわち(部下ではなく)上司こそが一般のアメリカ人の姿として描かれているのではないでしょうか?
ストーリーは、このアメリカ人たる上司の2つの倫理と不倫理、「部下の出世」と「自分の不倫」、すなわちジャック・レモンとシャーリー・マクレーンを、主人公のアパートという意外な場所で「生」と「死」の境目という形で結びつける。その窮地を救ったのは、上司でも出世でもなく、主人公の人望と機転であることはいうまでもない。
そして2人が結ばれる(=倫理と不倫理がむすばれる)エンディング。 隣室のドクターの目の節穴っぷりといい、なんとも痛快な作品だと思います。
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