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[コメント] CURE/キュア(1997/日)

日常に留まる者とそこを通過してしまった者
おーくらくん

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







黒澤清は好き。今の日本映画はろくでもない「おしゃれ」な映画が多いが、黒澤清は心臓をえぐるような精神描写をしてくる。役所は日本の役者の良心だと思う。萩原も問題はあったがこと作品に関しては真摯な姿勢が見える。この3人が組んでいるだけでも観る価値はあるのではないか。

役所は、はたから見ればかなり悲惨な状況でしかもそれが永遠に続くかのような日常の中で生きている。精神を病んだ妻、開放することのできない怒り。萩原はその日常を通過してしまい既に彼の場所はここにはない。役所が萩原に深く関わって行くことにより、彼の日常はその暗さを増し自身もその日常への懐疑を抱く。妻との別離により日常への心を定め、萩原との訣別により非日常を断ち切る。そしてラストはいつもと変わらずファミレスで食事をすることにより日常への回帰をしている。そこにあるのは日常からの逃避形を見ながら残酷な日常を送ることを決意する意思である。

(評価:★4)

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