[コメント] 座頭市御用旅(1972/日)
座頭市の居合いの「間」は勝新のプロフェッショナル振りが窺える。さぞや現場の空気は張り詰めていた事だろう。だが、かたや演出の「間」はどうだ?座頭市の魅力は「間」と勝新のクローズアップから溢れてくるはずなのに・・・
盲目なるが故、全身をあらゆるアンテナ・ソナーと化して生きている怪物。それが座頭市だ。本シリーズでは度々彼のクローズアップが効果的に挿入される。それは小動物のように動かす耳であったり、匂いを嗅ぎ分ける鼻であったりする。
本作もそういったカットは散見できたが、より多くこういったカットを多用すべきではないだろうか?人間ではなくより動物に近い感性と感覚を持ち合わせた化け物を表現する為の重要なカットなのである。
そしてもうひとつ。前作の『新座頭市 破れ!唐人剣』で気に入ったシーンがある。敵の居場所を探し求めていた市がようやくそれを知るシーンである。カメラはそれを知った瞬間に切り替わることなく市を撮り続ける。市は一刻を争う場面にも関わらずに急須に手をやり、直接口に持っていき卑しい様で湯を飲む。その様は下品で汚らしく猥雑なカットである。余計な長廻しなのかも知れないが、座頭市の猥雑さと怯えと自信といった様々な含みを旨く伝えた好演出だったと思う。
これが本作には欠如していた。シリーズもここまで長くなると主人公の描写に詳しい説明は不要なのかもしれないが不満は残る。私にとって座頭市は稀代の下卑た化け物であり、スマートな座頭市は期待していません。
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