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[コメント] 単騎、千里を走る。(2005/香港=中国=日)

豪華な「世界ウルルン滞在記」と私の高倉健
sawa:38

素人出演者たちの素朴な演技に感銘を受けたという高倉健。「この歳になって、演技って何なんだと思いました」とは健さんの言葉。そして何と彼自身も「素の顔」で旅人になってしまったようだ。

東映の「エース高倉」として若い頃から主演を張ってきた健さんだが、元々彼の演技力の低さには定評があった(と思う)。ギャング映画時代には丹波哲郎に喰われ、任侠映画時代には鶴田浩二に圧倒され続けた。彼が真の一本立ちするのは『網走番外地』シリーズからではなかろうか。だが、悲惨なことに、この『網走番外地』シリーズは手の付けようがない程のB級作品の大量生産であった。本作で日本パートを担当した降旗康男が多くを撮っており、彼の罪は大きい。

そして、その後高倉と降旗のコンビで数々の作品を世に送り出していくのだが、芝居の出来ない健さんに対し、無口で寡黙なイメージ戦略で、一発逆転の「名優」に祀り上げてしまうことに成功した。『鉄道員<ぽっぽや>』や『ホタル』はそれの頂点といえる。もはや誰も健さんが裸踊りや漫才師もどきのギャグを連発する姿を想像できない。

はっきり言って、彼は下手だ。大スターではあるが、名優ではけっして無い。

そんな高倉健主演の本作はどうだ?彼は「芝居」をしていたのか?もちろん、私は素の彼を知る由もないが、TV放映された本作のメイキングやらDVD収録の特典映像を見るかぎり、本編の彼の姿と素の姿がまったく同一としか感じられなかった。

本作はそういった事から、セミドキュメンタリー的な風合いを醸し出しているが、これは映画として成功だったのだろうか?あえて素人たちを起用した意図は見事に成功し、なるほどリアリティある演出になっただろう。だが、唯一のプロである健さんは、それで良いのかって事なんである。

素の表情で画面に映るその様は、まるでTVの『世界ウルルン滞在記』ではないか。ギャラの安い若手俳優じゃあるまいし、・・・・・

これがセミドキュメンタリーなら私も野暮は言わない。だが、あの素人俳優たちの何とも「巧い芝居」を見ていたら、我等が健さんのヘボさ加減ばかりが目についてしまうのです。

PS,義理の娘の配役に寺島しのぶを持ってきたのは良いですね。せっかくならば、健さんの亡き妻役には遺影だけの登場でも良いから藤純子・・(いや今は富司純子ですか)を出して欲しかったですね。『あ・うん』での衝撃の再共演のバージョンアップです。 と、以上東映ファンの儚い願望でしたが、本作は東宝なんでしたよね・・・

(評価:★2)

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