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[コメント] 男はつらいよ(1969/日)

小津の「晩春」へのオマージュ
TOMIMORI

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







「記念すべき最初のロケ地が京都ってベタだなぁ」などと思ってはいけない。 これはよく指摘されていることだが、小津の「晩春」へのオマージュと言われる。 再見して気がついたのだが、寅が(おそらく奈良の)鹿のソフトビニール人形を冬子にあげるのも「晩春」を意識しているかもしれない。 「晩春」の例の有名なシーンの会話に

「でも、とても愉しかった、京都」 「まあ、贅沢いえば限がないが、奈良にも一日行きたかったねぇ」

というのがあったが、御前様親子も「晩春」の周吉親子と同じく奈良に行けなかったという設定ではなかろうか。

翌日には紀州に行くらしいが、京都泊の晩に、

「幸せは待っているもんじゃなくって、やっぱり自分たちで作り出すもんだよ」 「結婚することが幸せなんじゃない。新しい夫婦が新しいひとつの人生を作り上げてゆくことに幸せがあるんだよ」

という会話がされていたことは想像に難くない。 そう思って見ると自分は父娘の前から立ち去る寅の後姿になんともいえない哀愁を感じてしまう。

(評価:★4)

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