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[コメント] ボウリング・フォー・コロンバイン(2002/カナダ=米)

ものすごく知的で隙のないつくり。行動の人、マイケル・ムーア。
なつめ

マリリン・マンソンの分析が的を得ていると感じた。その後の展開が、すべてその発言を軸にすると納得がいくことばかりなのだ。

一度持ったら手放せないものを持ってしまったことの不幸。(主に)銃に関するドキュメンタリーであるこの映画をみて、アメリカが核を手放せないのもわかる気がした。ほぼ環境が同じのカナダとの比較が興味深い。違いがわかるにつれ、アメリカの人を不安と恐怖にとらわれたかわいそうな人たちと思えてくる。「攻撃は最大の防御」という言葉を思い出したりもする。

ただ、「銃を保持する」というのを「寝る前に家の鍵を閉める」レベルに移したとして、私自身も鍵を閉めずにはいられないし、たとえ「みんなでいっせいのせで鍵を閉めるのやめましょう」と言われても果たして従えるかどうかわからない。一度身についた不安と恐怖を取り除くのはなんて難しいことかという想像はできる。

チャールトン・ヘストンの人種差別発言を引き出したのはすごい。映画中盤で「犯罪を犯すのはいつも黒人」というニュースを制作する人のインタビューと、それぞれがお互いを裏付けている。そうじゃないとわかっていてそういう番組をつくる人、そういう番組を作るのを醜いと思う人、差別していることを自分で気付かずにいる人。いろんな人がいるんだな…という絶望と希望がないまぜの感情。希望というのは、まともな人もいるんだな、という意味での希望。

「チャールトン・ヘストンの家を出て現実に戻り」という言い方をしたマイケル・ムーア。チャールトン・ヘストンのことを「現実を見ていない人間」と思ったのではないだろうか。

(評価:★4)

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