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[コメント] ピースメーカー(1997/米)

果たされる目的の大小と,何かを成し遂げようとする意志の強さとの(無)関係。
ymtk

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 自分が最初にクルーニーを知ったのは『フロム・ダスク・ティル・ドーン』で。なので,中盤のカーチェイスあたりのデヴォーには笑った。やっぱこうじゃないと。ロス先生もいいけど,クルーニーはやっぱこういうキれた役が似合うなあ。

 次は内容についてちょこっと。ニューヨークへ核を持ち込むテロリストの行動を見ながら思った。果たされる目的が小さいとか大きいとかっていうことと,何かを成し遂げようとする強い意志が生まれるかどうかってこととは,全く関係がないんだなあ。理性のある,分別のある人は,「たかが一民族の争いで,世界を破滅に陥れるようなまねをしなくてもいいじゃないか」と思ってしまうのだろう。でも,テロリストにとって,一民族の争いだからこそ,自分にとってもっとも大事な戦いだからこそ,自分のすべてをなげうってでも,使命をはたそうとするんだろうなあ。

 ナショナリズム,好きなもの(物・者)への忠誠心,愛するものを守りたい気持ち,愛するものを守れなかった悲しみ,復讐心。どれも同じくらい強く,人をつき動かすものなんだなあ。そう思ったし,そういう気持ちをおさえられるかどうか,それが人間の理性の問題なのだなあとも思った。家族や愛する人。そんな人を殺されてもなお,理性をたもつことができるのか。考えてしまう。

 それと,気になった言葉。テロリストが言った言葉。「昔の日々を返してくれ」。確かにそうなのだろう。でも,その昔の日々は,潜在的に誰か(他民族)犠牲のうえになりたっていたのではないだろうか。だからこそ,民族紛争が発生しているのではないか。そのことを棚上げにして,それでこの言葉を発しているとしたら。かなり問題なのだろうなあと思う。

 最後に。女性監督だからということはないのかもしれないけど,映画のなかで直接にはケリーとデヴォーの関係の進展を描かないのが,意外によかったかも。危険を共に克服して,恋に落ちるなんていうありがちな話になっていない。そういうことを描かないことで,からっとした映画になっているなあと思う。最後にほんのちょっと,これからの関係を予想させるシーンなんかもあるけど,あくまでさわやかに映画は終わる。同じ仕事をしたもの同士の連帯感。好きだって気持ちになっているわけではないのだろうけど,でもなにかいないと変な気がするみたいな。そのあたりの気持ちを,最後の何分かでうまく表現できてたなあと思った。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)けにろん[*] ボイス母[*]

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