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[コメント] レザボア・ドッグス(1992/米)

多分本作は、観た直後にレビューするなら、更に評価は上がっていたと思います。冷静に落ち着いてレビューする作品じゃありません。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 華々しい監督デビューを飾ったタランティーノの第一回監督作品。これは昔からタランティーノが撮りたいと希望していたものの、監督未経験の彼にはなかなかそのスポンサーがつかず、ついに低予算のモノクロ16ミリで撮ろうとしていたところ、この脚本がサンダンスで高く評価され、更にこの脚本を読んだハーヴェイ=カイテルがシナリオの面白さに驚き、主演どころか製作まで買って出たという逸話を持つ作品で、いわば現代のアメリカン・ドリームを体現したようなデビュー作となった。

 結論から言ってしまうと、この作品は荒削りそのもの。キャラクタに感情移入をさせるような作りはしていないし、特に後半になると、暴力のオンパレード。ストーリーも何もあったものではない。

 しかしこのノリは一体何だ?と言う位に引き込まれる。極端に誇張された時間の使い方が無茶苦茶に上手い。緊張感と開放感、そして展開の意外さ、全てが最後にぴったりと収まるべきところに収まってる。タランティーノという天才演出家の出世作としては、出来すぎた作品だ。

 しかし、いざこれの魅力を説明してみろ。と言われると、大変困ってしまう。どこが良いのか悪いのか以前に、これは「タランティーノ以外に作ることが出来ない」としか言いようが無い。これはタランティーノにオリジナリティが溢れているという訳ではない。むしろ全くその逆で、彼の作品のほとんどは、どこかから引っ張ってきたコラージュでしかない。しかし、そのコラージュのセンスがあまりにも卓越しているのだ。静から動へ、そして緊張感へ、めまぐるしく視点が変わり、その度ごとに観てるこちらは飲み込まれ、「おお!凄え」としか思えなくなってしまう。ほぼ演出力だけでここまで魅せられる監督は他にいない。この映画に関しては、「元ネタがどこそこから」と言う議論は全くの無意味。ただ映像の並に飲み込まれ、あっけにとられ、そして最後に「あれ?終わったの?」と思ってしまう。これが実際正しい観方と思える。

 演出に関しては文句なし。というか、これぞタランティーノ!と言う作品。ただし、タランティーノ作品の例に漏れず、物語は大変単純な上に矛盾だらけという点が、後になってくると思い出されてしまう。それが結局この作品のマイナス点になってしまう。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)kaki[*] sawa:38[*]

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