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[コメント] ザナドゥ(1980/米)

意気高く、そのまま前のめりにぶっ倒れたような作品と言うべきか。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 『サタデー・ナイト・フィーバー』(1977)および『グリース』(1978)の大ヒットによって、それまで行き場を失っていた映画ミュージカルの世界は一気に活性化した。これからの時代はノリの良いミュージカルだ!と言わんばかりにディスコ調のミュージカルや、それに沿った映画が次々に作られることになった。折しも80年代ポップスの最もよき時代であったため、楽曲は最高のものが使えることもあって、本当に活気づいていた。

 その中でも本作は設定上とても話題性を持っていた。ポップス界の第一人者オリヴィア・ニュートン=ジョンが主演。しかも往年のミュージカル大スター、ジーン・ケリーとの共演!

 これは大きな意味合いを持つ。50年代最もミュージカルが好まれていた時代と、80年代をつなぎ、これからのミュージカルを占おうというのだから、最も壮大なスケールの作品であった。なんせジーン・ケリーの遺作であり、最後のタップ姿が観られる作品と言うことで、それだけでも観る価値はある。

 …だが、その壮大さが徒になったか。意識ばかりが先行して、前のめりにぶっ倒れたような作品になってしまった。

 良く言えばおもちゃ箱をひっくり返したような、びっくり箱のような作品と言えなくもないが、実際に出たものは、とっちらかっただけの作品である。根本的にバブル時代を象徴するかのように物語が全部表層的で深みがなく、登場人物が何も考えずに衝動的に行動する奴らばっかりで、適当に善悪を設定する(音楽を愛する人は善人で、それをビジネスにする人は悪人という位置づけ)。ミュージカルシーンが不自然で、物語を適当につなぎ合わせるだけ。

 正直、物語をなくしてミュージカルシーンだけをつないだ方がまだましなレベル。酷い作品だった。

 これを同時代で観ていたら、ノリに同調できたかも知れないが、後年になって観ると、これが本当にきつい。本当に恥ずかしくなってくる。

 ミュージカルシーンは良いんだ。だから物語さえ何とかなれば、保有して繰り返し観ていたかったレベルになれたものを。

(評価:★2)

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