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[コメント] ロスト・イン・トランスレーション(2003/米=日)

肉体に関する孤独感は否応なくやってくる。その時こそ、この作品が分かってくるんだろう。数年後、もう一度観てみたい作品である。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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 はっきり言って退屈そのもの。大分ハリウッドも日本のことが分かってきたようで、昔ほど日本が酷い扱いを受けてる訳ではないが、やっぱり異国情緒というのを主眼としてるので、済んでる人間が観ると、失笑ものの描写が結構あるし、物語自体も単に出会って、別れる。それだけで淡々と流れるだけ。このパターンだと、間が重要になるんだが、邦画とは又違った間の取り方をしてるため、その部分も退屈なだけ。はっきり言わしてもらうと眠くなった。

 だけど、余韻は決して悪くない。観終わってしばらくすると、じわじわと暖かい感じがしてくる。

 その理由というのを考えてみると、単純に考える限り、異国の中で、孤独を慰め合うのが良いのか?とも思うが、事はそう単純ではないような気がする。

 これは観てる側の肉体というものを感じさせるから。なのではなかろうか?と言う風に思える。マーレイ演じるボブの役回りは、実家に妻と子供がいて、年収も良い。悪い生活ではない。対するヨハンソン演じるシャーロットも新婚で、互いに愛し合っていることを確認できる夫もおり、やはり不幸せではない。ただ、二人とも孤独なだけだ。どんな幸せな時でも、時が流れると孤独がやってきて、それから逃れることは出来ない。人は孤独と共にある。その今の孤独を分かってくれる人には、世代を超えた友情が生じる。誰しも持つ、ほんの些細な孤独という感情が巧く表現されていたと言うのが大きな点なんだろう。  それと、もう一つ感じたのは、孤独というのにはもう一つ重要な要素があるのだと言うこと。

 私のことを書くことをちょっと許していただけると、私は『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』(1984)によって、映画そのものの興味を強くしたものだが、この映画をリアルタイムで観たのは中学生の時。何も言葉を持っていなかった私には、この映画について語る当時のオトナの人たちに強いあこがれを持ったものだ。しばしの時を経て、そう言う人たちとも知り合いが出来、今も何人かと親交が続いているが、このところメールで彼らが次々に身体の不調を訴える文面を見ることが多くなった。思えばもう全員いい年なんだよな。肉体が円熟していくと、そう言う寂しさというものも出てくるんだな。と、最近そう思えるようになってきた。私自身数年後には(多分ほどなくして)、同じような悩みを持つようになるんだろう。と思っている折だったのが、丁度噛み合ったんだろうと思う。

 余談ながら、演出上の難点について一つ。

 これは日本という国の異国情緒を演出すべき作品なんだから、日本語で喋ってる時の字幕は残してほしかった。そのくらいの配慮はしてほしかったね。

(評価:★3)

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