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[コメント] オリバー・ツイスト(2005/英=チェコ=仏=伊)

何故ポランスキーはわざわざこれを作ろうとしたのかが分かりません。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 「オリバー・ツイスト」は何度も映画化はされているが、定番だけにそれぞれの映画で特徴付けはなるだけしっかり行おうとしていて、例えば1968年のリード作品だと、それをミュージカルにして暗さを払拭してみせたし、物語の重点の置き方によって様々な見せ方を付けていた。

 それでポランスキーが本作を作ると聞き、更にフェイギン役がキングズレーと聞くと、本作はオリバーよりもむしろフェイギンの方に重点が置かれた作品だろう。という気がしていた。

 ポランスキー監督は自らがユダヤ人であることを明確にして映画作りをしている人だし、原作のフェイギンはごうつくばりなユダヤ人。当然この心情を掘り下げるような作りになるだろう。折しも前年にはシェイクスピアの『ヴェニスの商人』が、まさにそう言った作られ方をしているのもあり、その追い風があるならポランスキーも色々実験できるだろう。

 …で、その出来だが、驚いたことに本当に原作通りに作られ、ほとんど何にもいじらないままだった。フェイギンの嫌らしさもそのまま。違いと言えばフェイギンがユダヤ人であることを一言も言わなかったことくらい。ポランスキーには許されてる(あるいは期待されている)表現を敢えて使わなかった理由が分からない。

 お陰で淡々とした物語を追体験しただけで終わってしまう。

 実際美術はなかなかよろしくて、その分無茶苦茶金がかかっているが、興行は全く振るわなかったらしい。結果としてポランスキー監督らしさと言うのが全く感じられない作品だった。

(評価:★3)

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