[コメント] 断崖(1941/米)
基本的にメロドラマが嫌いだが、こう言うのだったら大歓迎。特に最初にたいした作品じゃないと思わせておいて後半に本当に楽しくなるなんて、一番嬉しい映画のパターンだね。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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ヒッチコック監督お得意のサスペンス作品。冒頭から中盤に至るまで完全にメロドラマの定式に従って進み、監督にしてはちょっと嫌味な作品を作ったもんだ。と思っていたのだが、観ている内にじわじわと疑惑が浮かび上がってきて、ラストはほぼ完全にのめり込んでしまった。いやはや上手い上手い。
この作品の形式はフォンティン演ずるリナの主観によってのみ丹念に描かれているので、観客が感情移入しやすい。しかもなんと言っても疑惑を増す小道具の巧さよ。後半になってグラントが牛乳を持ってくるシーンは迫力充分。暗い中、牛乳だけがペカッとした光を放っており、不気味さを増しているなんて、本当に巧い使い方だ。意識が完全にそれに向かってしまい、絶対これは毒だ。としか思えなくなるしな。その辺を丹念に作るからこそ、監督は偉大なんだろうな。だからこそラストの崖のシーンが光ってくる。疑惑を盛り上げるだけ盛り上げ、クライマックス!
…と、思わせてあのラストか。何か拍子抜けっぽいけど、そこがヒッチコック。彼に良いように弄ばれてる自分に気付く。
前半から後半に至るフォンティンの表情の変化は素晴らしく、グラントの曖昧な表情も上手かった。ややご都合主義な部分もあるけど、キャラクターを絞り込み、徐々に怖さを増していく手法はさすがだ。
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