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[コメント] 翼よ!あれが巴里の灯だ(1957/米)

観終わった後、大変清々しい気分にさせてくれる好作です。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 有名なリンドバーグの大西洋無着陸飛行を自ら描いた「翼よ!あれが巴里の灯だ」の完全映画化作品。リンドバーグはその妻アンも含め、才能に溢れた人物で、一見無謀なこの試みも彼の長い人生の中の一エピソードに過ぎない。実際小説では自分を振り返ってこれを淡々と描いていた。それ故にこそ、迫力を持って読ませる自伝だった(有名人になったお陰で色々辛い思いもしたみたいだし)。

 それをワイルダーが映画化というのが面白い。当時のハリウッドを代表する物語の紡ぎ手が人の物語を作るってのが面白いところだが、さすがのワイルダーも飛行を中心に描くことは難しかったらしく、本作の大部分はそこに至るまでを描いているのが特徴。実際はこんな簡単にはいかなかったんだろうけど、終始ニコニコしていたスチュアートのお陰でテンポ良くまとめられている。確かリンドバーグはこれを成功させた時は20代前半じゃなかったかと思うけど、あんまり違和感はなかった。

 一つの目標に向け、希望に溢れて疾走する人って、脇で見ていても凄く楽しい。まさにその楽しさと言うところに本作の目玉があったんだろう。そう言えば『エド・ウッド』(1994)とか『タッカー』(1988)の楽しさって、これと同じベクトルだ。

 実際本作は飛び立つまででほぼ物語は終わってる。延々飛んでるシーンはいくつかのトラブルはあったものの、順調に行ったから、あんまり目立った部分はないし、実際結構退屈。ワイルダーの良さは人間同士の会話と間の取り方にある訳だから、やはり一人で延々独り言をやってるシーンは難しかったみたい。寝ていてはっと起きるシーンなんかは面白かったけど。

 リンドバーグの人生は本来ここからが佳境に入るのだが(息子の誘拐殺人事件や親ナチス発言、更に太平洋戦争への参加でのアメリカ批判など)、これで終わらせたからこそ、本作は面白いままで終わってくれた。

(評価:★4)

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