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[コメント] ミケランジェロの暗号(2010/オーストリア)

面白い作品だったけど、このタイトルはないよなあ。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 本作を劇場で観ようと思ったのは予告を観たお陰。

 そこで、ナチスがミケランジェロの絵に隠された暗号を解こうとし、そのためにユダヤ人の知恵を借りようとする。そんな印象を受けた。なんとなく『ダ・ヴィンチ・コード』(2006)の二番煎じみたいなタイトルだが、そう言えばナチスはオカルトの研究もしていたらしいし、こう言うのも面白いかも知れない。とか思って劇場に足を運んだ。

 …そりゃ、勝手にそう思っていたのは私の責任には違いない。だけど、このタイトルとあの予告。いくら何でも内容に隔たりがありすぎだろ。まさかこんな作品だとは思ってもみなかった。

 でも、これはこれで充分楽しめる内容だし、ミスリードを狙ったとしたなら、私限定では正解だった。

 この作品、物語そのものが重いため、コメディとは言えないが、しっかりユーモアを取り入れ、観ていてなんか楽しい。

 本作で面白いところは、制服を着ることによって人は自分自身のイメージを作り上げるという部分。これは単に周囲の人に対するイメージ操作と言うだけでなく、自分自身も自らの外観に引きずられてしまうと言う事も含まれる。

 ここには二人の主人公が登場するが、一方のスメカルは、ドイツ人ではあるがユダヤ人家庭の使用人の息子として生まれ、家族同様に育っているため、ユダヤ人に対する偏見は持ってないのだが、ナチスの制服に袖を通した時から、意識がすっかり変わってしまった。軍部に対する忠誠心を示すために恩人を売り、彼らのみの安全が図れないことを知った時も放置してしまう。彼の場合は、もとよりそういう考えがあったと言うよりも、ナチスとしてふさわしくあろうとしてのことで、制服に引きずられている姿が見える。

 一方のヴィクトルにしても状況は同じ。中盤で、スメカルと服の交換をしてしまったことで憎きナチスの服を着込むことになるのだが、最初のうちは戸惑っていたものの、やがて「意識が変わる」とまで言ってしまってる(ユダヤ人にそれを言わせるとは、なんとも皮肉めいたことではあるが)。

 軍服というのは権力が背後にあることの象徴であり、それと一体化することによって自分自身が権力の一部であることを認識させるに良いアイテム。その辺も考えて軍服というのもデザインされているのかもしれない。

 服によって立場どころか性格まで変わってしまう。この皮肉をユーモアとして受け取るなら、本作は大変興味深い作品として観ることができるだろう。

(評価:★4)

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