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[コメント] フェイシズ(1968/米)

本作を撮り切るまでに3年もかかったそうですが、その分ショットの切り替えが不自然に。無理だったのだろうけど、一気に作って欲しかった。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
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 さすがインディペンデント。明らかにこれは時代の最先端を突き抜けていた。ほとんど会話と表情のみで展開する物語は、明らかに人の内面を焦点にし、人によって傷つけられた心がだんだんと壊れていく過程を克明に描いていく。

 一概には言えないが、人間の心が壊れていくにはそれなりに時間がかかることが多い。言われたことがショック過ぎると、それが心にしみこむまで時間がかかり、更にそれを理解していく内に心が蝕まれていき、最終的に爆発してしまう。この時間は場合によりけり。いわゆるトラウマと呼ばれるものは何十年も経過して出てくることもある。

 ここでのマリアの場合、リチャードの言ったことを理解するまでに一晩かかった。その間平静な事をしていても、心に対する圧迫はどんどん増していき、逆に気晴らしのお陰でそれが一気に爆発してしまったとも考えられるだろう。

 その辺をねちっこく克明に描いて見せたのは、本作がパターンに陥った演技的人間関係ではなく、真実の人間の心を描きたいと思ったからなのだろう。ここまで丁寧に人間の心理をえがいた作品はこの時代のハリウッドでは本作がほぼ唯一。流石インディペンデントの父と言われるだけのことがある(日本映画にはそれなりにあるのだけどね)。

 大変素晴らしい作品であることは言うまでもないが、物語そのものが実はかなり退屈である辺りがちょっと残念なところだし、あと長い時間作っていた事もあって、演出の切り替えがかなり不自然な所もあったりして…これを一気に作っていたなら本当に素晴らしい作品になってただろうね。

(評価:★3)

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