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[コメント] 007/私を愛したスパイ(1977/英)

これぞ007の真骨頂!私にとってのシリーズ中最高作品です。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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 記念すべき10作目の作品。前作『黄金銃を持つ男』(1974)が興行的に失敗したため(私は結構気に入ってるんだが)、相当に気合いを入れて作られた本作。記念の10作目を飾るにふさわしいスケールの作品に仕上がった。バランスで言えば、シリーズ屈指の良さだ。

 とにかくこの作品はサービス満点で、冒頭から手に汗握るアクションシーンから始まり、スケールの大きさと奇想天外な秘密兵器にスピード感と緊張感溢れるストーリー展開。そして幾多のパロディ。これぞムーア・ボンドの真骨頂といえる作品。無茶苦茶魅力があるものばかりだ。ストーリー展開も、核爆弾による米ソ破壊を数秒のアドヴァンテージで回避するとか(ちょっと気になるのは、核ミサイルの標的はモスクワとNYとなってるけど、なんでワシントンじゃないの?)、仇同士が組んで任務を遂行するとかの緊張感がほどよく加味されてるし、海底基地アトランティスや超大型タンカーの中での活劇など、舞台も魅力的(特撮ファンだから、この描写は絶対支持したい)。ボンド・カー(今回はロータスエスプリ)のギミックも凄い上に、笑いも忘れてない。今回はQ(リュウェリン)とのやりとりも長めに取られてるのも個人的に評価したい。

 勿論キャラクターも魅力的。ボンドは相変わらず肝心なところでドジだし(あんな簡単に睡眠薬を嗅がされるヒーローは前代未聞だろう)今回のボンド・ガールであるバック(後のビートルズのリンゴ=スター夫人)が、これまでに無い、非常に意志力の強い女性を演じてくれたのもあるけど、なんと言っても本作はあのジョーズに尽きる!ひたすら目的を遂行しようとする、まるでターミネーターを真似たような(逆だ!逆!)タフさと強さ。更にターミネーターとは違い、ふんだんに笑わせてくれるのも心憎い演出だ(『ロシアより愛をこめて』(1963)をパクった寝台列車のアクションで、ボンドとアニヤが長々やりとりやってる間、ずーっと黙ってクローゼットに隠れていた姿を考えると、今でも笑えてくる)。最後には名前のように本当に人食い鮫と格闘までしてくれるサービスぶり。次作『ムーンレイカー』(1979)にも登場するのはむべなるかな。

 笑い部分はそれだけじゃない。エジプトまで出張しておきながら、全くロンドンと変わってない働きをしてる(マニーペニーとボンドのやりとりまで全く同じ)英国情報部の描写とか、ソ連スパイの呼び出し音が『ドクトル・ジバゴ』のテーマソングになってるとか、エジプトに行ったらいきなり『アラビアのロレンス』のテーマが流れるとか、凄く楽しい。

 シリーズ中で、これほど楽しめた作品はなかった。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)茅ヶ崎まゆ子[*]

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