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[コメント] 特別な一日(1977/仏=伊)

昼メロ嫌いなのですが、本作は気に入ってます。それで、何故かと考えてみました。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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 戦前のイタリアを舞台にした、イタリア映画界を代表するマストロヤンニとローレンのラブストーリー。

 はっきり言って私はメロドラマが嫌いである。特に不倫ものを扱った昼メロっぽい作品は大嫌いと言えるのだが、何故か本作は結構気に入ってる。

 何ででだろう?と考えてみよう。

 本作は単なる不倫もののメロドラマとしてではなく、政治的な意味合いが強く、それに二人の惹き合い方が男と女の関係と言うよりは、疲れ切った二人が互いにいたわり合って結びついた。と言う辺りが気に入っているのかも知れない。ローレン演じるアントニエッタは生活に疲れているし、マストロヤンニ演じるガブリエレはこれまでの政治活動や、同性愛者というレッテルに苦しめられて疲れ切っている。こんな二人が惹かれ合うというのだ。悲しみの中で、ほんの少し与えられた、理解し合える相手を見つけ、そしてあっけなく離れてしまう。二人にとって、この出会いは本当に“特別な一日”であった訳である。

 そしてタイトルは同時にこの日ヒトラーがローマにやって来るという、歴史上における“特別な一日”に引っかけたのだろう。こういうケレン味があって初めてメロドラマにも張りが出てくるってものだ…逆を言えば、それだけケレン味が無ければ惹かれることが無いという私自身の好みの問題もある訳だけど。

 それにこの作品、キャラクタが実に良い。イタリア人気質を発揮し、激しすぎる性格を強調しやすいローレンが、ここでは生気を失って本当に疲れ切った表情をしていたけど、それが見事に上手くはまっていたし、プレイボーイ役ばかり演じていたマストロヤンニがここでは老境にさしかかる役をやはり上手く演じきっていた。実際二人のそれまでのフィルモグラフィとは全く異なる役を演じているのに、それがぴたりとはまっていた。

 演出も良い。音楽を廃し、ラジオの声と多くの人間の出す声を雑音としてのみ捉え、その中で静かに静かに二人の会話が紡ぎ出されていく。その演出が心憎い所。

 ああ、これでやっと本作を気に入ってた理由が分かったよ。すっきりした。

(評価:★3)

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