コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] ハリーとトント(1974/米)

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ。という時代になってますな。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 老人と猫の二人旅を描くロードムービー。旅の途中で合った人々や、出来事を丁寧に描いた、どこか物悲しい物語が展開する。主演のカーニーの好演もあって(ちなみに、本作が初主演作で、オスカー初ノミネートだった)世代の違いによる理解のすれ違いや主人公の寂しさなど、非常に好ましい。

 だけど、現代の目で観るに当たり、本作の最大の良さは、当時のアメリカ社会を見事に浮き彫りにしてるってところだろう。

 アメリカは広大であり、街ごとにずいぶん特色が違う。富の格差が広がり始めたNY、風の街とも言われ、寒さが強調される中、急速に都市化するシカゴ、そして一攫千金の街ラスヴェガス。それぞれの街に順応しているハリーの子供たちには、みんな自分のことで手いっぱい。もはや古き良きアメリカとは相いれない人々が、旧世代に属するハリーと出合い、互いに理解できない存在であることを確認し、その中で親子の絆はどこにあるのかを互いに見つけようとしている。丁度そんな時代だと言うことをここでは自然に描き出すことに成功している。ステロタイプではあっても、街毎の特色が本当に良く出ている。  そしてその中に現れ始めたヒッピーと呼ばれる人々も。この時代の作品でヒッピーを普通の人間として描いた作品は珍しいし、彼らなりの考えが決して一般人と相いれないわけではないことを、これも自然に描いてる。

 ロードムービーの意味合いとは成長にある。とは私なりの考えだが、本作は成長と言うよりは、“理解”と言うべきかもしれない。観ているこちら側もアメリカ社会と言うものを少しは理解できた気にさせてくれる。アメリカを知りたい人にはうってつけの素材だろう。この時代を通り過ぎて、今のアメリカがあるのだ。

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (1 人)けにろん[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。