[コメント] グロリア(1980/米)
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一流の俳優ではあるが、監督としても知られるカサヴェテスは、本当に自分の作りたい作品だけを私財をなげうってでも作ると言う側面も持っていた。本人も俳優業は自分の好きな作品を作るため。と公言していたこともあり、そんな彼を慕って多くの役者がほとんど出演料無しで出演してもいるのだが、一方ではカサヴェテス監督作は極めて観念的な作品ばかりなので、興行的には絶対に受けないという事実もあり。特にヨーロッパの批評家からは褒められたとはいえ、散々な結果に終わった『オープニング・ナイト』(1978)のお陰で監督は莫大な借金を抱えてしまった。
ただし、それで終わらないのが一流監督と呼ばれるゆえんか、金のためと割り切って本作の制作を了承した訳だが…なんと監督の代表作とまで言われる作品に仕上がってしまった。
物語そのものはそんなに複雑なものではない。だけど、流石にこれまで観念的な映画を多数作ってきたお陰か、演出が際だって良い。大変失礼な言い方になるが、ローランズのようなおばさんが主人公では、全然華がなさそうに見えるのに、ところが本当にローランズは美しい…と言うか、とても格好良い!男勝りの活躍を女性ならではの心情を見事に表現していた。ローランズの存在感とカサヴェテス監督の息の合ったコンビネーションのお陰に他ならない。
特にグロリアがフィルとの関係が良い。二人は親子のようでもあり、恋人のようでもあり、相棒のようでも、そして敵同士のようなものでもある。これらの関係が刻々と変わっていくという、間の取り方が絶妙。これが仮に主人公が男であったら、かなり一方的な関係になっていたはずなのだが、それを微妙なものに留めているのが本作の最大の売りと言えるだろう。
尚、監督の予定では子役のアダムスが中心だったそうだが、脚本を書いている内に『子連れ狼』の影響を受けて、脚本を変え、ローランズ中心ののアクション映画に変わっていったとのこと。タランティーノもかなりの影響を受けたと言うから、海外での『子連れ狼』の評価は高いようだ。
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