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[コメント] グレンとグレンダ(1953/米)

この作品を、映画単体として「面白い」と思った私って…
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 これが“史上最低監督”の呼び声も高いエド=ウッドのデビュー作。当時にしてこの映画の評価は最悪で、更に現在に至るもこの映画は伝説と言えるほどの最低ぶりで有名。

 …で、これを観て問題が一つ生じた。

 面白いんだよ。純粋に一本の映画として。

 マジでこれを観終えた後、自分自身について考え込んでしまった。

 そりゃかつて『エド・ウッド』(1994)観てこの映画がどういう作品なのかあらかじめ分かっていたとは言え(フラーがウッドにセーターを渡すシーンはあの作品でもベスト・ショット)、その予備知識無しでも実はかなり面白かったりする。

 こう言う作品だからこそ、どこが面白いと感じたか、しっかり書いておく必要がある(私自身を誤解されないためにも…無理か?)。

 先ずこの作品の構造だけど、謎の人物(ルゴシ)が物語のストーリーテラー(ポーランド訛りで「糸を引け」と絶叫するシーンは迫力あるけど微笑ましい)となり、物語の端々に登場するが、本編そのものとはあまり関係はなく、医師が語る一つのエピソードとして物語は進行する。一見意味の感じられない三重構造となってる。しかし説明はされてないけどルゴシは恐らく人の心を操る神の如き存在として捉えられているようだ。彼が悪戯することによってグレンはグレンダという心を持つにいたる(途中出てくる心象風景はまさに“神”の世界を垣間見たグレンの心だ)。

 それでグレンの話が終わったと思ったら、又医師が出てきて別の性倒錯者の話をするのだが、実を言うとこれがこの映画の主題。これは実話で、第2次世界大戦の英雄ヨルゲンセンが突然性転換手術を受けてクリスチーネを名乗ったことが大ニュースとなり、それを映画化しようとしたのが事の発端。クリスチーネ本人を主演にしようとしたが、それが断られたため、監督自身が演じることになったらしい(事実監督自身服装倒錯者なんだが)。その構造が分かっていれば、結構楽しめるはず。

 それと一般に「意味不明」と言われるルゴシの台詞「どうだ、ドラゴンよ。おまえは少年を食うか? 子犬のしっぽや丸々と太ったカタツムリを」だが、これはマザー・グースの詩の一編、「男の子ってなんでできてる?女の子ってなんでできてる?」からの引用。グレンという男がグレンダという女に憧れるのは何故か?と言う説明で入れられている。たまたまこの詩を知っていたので助かった。(ルゴシの台詞に対して女の子のナレーションで「男の子は子犬のしっぽ。子犬のしっぽ。子犬のしっぽ。女の子は素敵なもので出来ているのよ。ハ、ハ、ハ。子犬のしっぽ 」と合いの手を入れてるので、はっきりとわかる)

 ちなみにマザー・グースの現詩を挙げておこう。ルゴシの台詞の意味がある程度分かるんじゃないかと思う(随分潤色されてるけどね)。

「男の子ってなんでできてる? 男の子ってなんでできてる? かえるとへびと 子犬のしっぽ そんなもので できてるよ

 女の子ってなんでできてる? 女の子ってなんでできてる? おさとうとスパイスと すてきなものみんな そんなもので できてるよ」

 ただ、ここまで説明しおいてなんだが、やっぱり私、変かな?

 そう言われたら肯定するよ。

(評価:★4)

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