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[コメント] ロード・オブ・ザ・リング 二つの塔(2002/米=ニュージーランド)

原作ファンは冒頭から喜んだはず。だって字幕に評論社の監修が付いてるんだもん(笑)。それを見ただけでどれだけほっとするか。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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 『指輪物語』の映画化第2作目。待ち望んでいた作品だったが、実は前作を私は今ひとつ評価していない。原作に本当に忠実だったけど、とにかく物語を詰め込みすぎ、しかもアクションの連続だったから、観ていて疲れ切ってしまった。

 そう言えば前作と言えば、「ラストシーンは何故か一気に次回作である『二つの塔』を飛ばして『王の帰還』に入ってるんだが…(多分、次回作はフロドは脇役に押しやられて、メリーとピピンを中心とした物語になるんだろう)」と書いてしまったのだが、これは私の勘違い。しっかり原作の『二つの塔』だった(だって前作の終わりではフロドとサムがバラド=ドゥアの塔の目の前に行ってたんだもん)。

 今回ももし前作と同じように極端に密度が高かったら…かなりの気合いが必要だ。

 案の定。最初の一時間は辛かった。頭の中にある「指輪物語」の物語と検証しつつ、「こんなシーンも入れてるのか」と感心しつつも、やはりきつい詰め込みで、頭がかなり疲れた(そんな苦労する観方をするからと言う、元も子もないつっこみは甘んじて受けます)。

 だけど、それを超えた辺りから、画面そのものに引き込まれてしまう。

 前作と較べ、CGはかなり控えめに(そうでも無いという意見もあるけど)、しかも出すところはしっかり出しているところとか、舞台がちゃんと現実世界のロケーションに寄っているところとか、非常に好感を持てた。ロケーションが(確か監督の出身地の)ニュージーランドなので、見慣れぬ風景の自然がとても美しい。何より前作で全然出来てなかった緩急の演出が本作ではちゃんと出来ていた。見せ場に至る前段階の描写が今度はしっかり描かれていたため、映画としての完成度も高くなっている(緩急がなかったのが前作の嫌な部分だったし)。個々人の冒険だけでなく、国を挙げての戦争状態の演出もしっかり出来ていた。しかも原作に忠実に。これだけよくバランスを取って作り上げることが出来たと言うことがすばらしい(いくつか「あれ?こんなシーン原作にあったか?」というのもあったけど、未だ確認はしてない。整合性を取るためのオリジナルなのかな?)。

 後半部分はかなりのめり込んだため、最初の一時間であれだけ疲れを感じた割には残り二時間がほとんど疲れることなく、ずっと画面に集中できた。是非DVDが出た暁にはちゃんと原作を読み返し、細かくチェックを入れてみたい(笑)

 ストーリー面については、今度は旅の仲間が3つに分かれ、それぞれのストーリーがかなり詰まっているので、それを把握するのは結構たいへんだけど、それだけしっかり原作を描写しているという事。よくぞここまで詰め込んだと感心。

 他にもキャラクターの関係とか、今回登場したエントとか、画面を埋め尽くすオークとの戦いとか、色々魅力はあるけど、本作は細かいところの描写が実に良い。これは一作目での評価にもつながるのだが、本作の巧さの一つとして、人物の対比というものがあると思っている。ホビットは常に小さい種族として描かれるため、彼らと対峙するキャラクターの目線は常に下に向いているし、なるだけ同一画面に入らないように気を付けているのもなかなか泣かせる。CGなら問題なくその描写は出来るけど、無意味に同一画面に出す必要はない。それと、これだけ土とか汗まみれになる描写が入るのに、旅の仲間の一人、エルフのレゴラスはどんな時にもさっぱりとした顔をしている。それと勿論ホビットよりも更に視線が下になるゴラム(原作ではゴグリとなっているけど、これは唾を飲み込む音をそのまま表記している。本作でもゴラムというのはそのような擬音を用いている)も、皮膚の質感とか、目の動きとかが巧いし、彼と対峙するキャラクターの目線もしっかり作られていた。

 確かに前作と較べアカデミーへのノミネートは減ってるけど(前作13賞ノミネートで受賞が3賞。今回6賞ノミネート)、私にとっては、むしろこっちの方が遙かに評価できる。 

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)茅ヶ崎まゆ子[*]

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