主演が渡部篤郎、薄っぺらい脚本、深みのないフラットな映像、観光に成り下がった景色、回転するキスシーン、移動撮影の走るシーン、ストップモーション、回想シーン、過去を引きずる男、そしてエンディングに小田和正。 こうやって聞くとテレビドラマかなと思うかもしれないが映画なんです。

全編あの懐かしいトレンディードラマのようです。

この映画でひとつだけ素晴らしかったシーンがあります。 ドン・ジエがお姉さんの病気を知り、朝出かけていきます。階段を降り、家の方を見て悲しそうな顔をします。そしてここからです。濡れた路面と彼女の足をカメラはとらえています。足を交差してそして動き出します。足を交差したときなぜかあっと心が動きました。そして画面はローアングルで上海の古い集合住宅の広場を映しています。ドン・ジエがバレーの振り付けをして回転して踊ります。回る、回る、回る。まるで悲しみをその躍りで振り払うように。ポニーテールと大きなカバンが宙に浮かびます。しかし回転は止まります。一瞬ですけどこのワンカットはいろいろな感情まで表現されていて素晴らしかったです。それを演じたドン・ジエは恐ろしい。

彼女はもう完璧にプロフェッショナルな女優だ。

しかし唯一あのポニーテールにだけまだ少女さが残っている。