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[コメント] ディーパンの闘い(2015/仏)

「戦い」ではなく「闘い」という邦題は、意外に的を得ているのかもしれない。
プロキオン14

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







少し予想していた映画とは違った。もっと異国の地で、即席家族がいろんな迫害だとか、暴力だとか、そういうものにさらされて、そういうものと対峙して、戦って戦って、なんとか家族を守り抜こうとする、命の物語だと。

でもちょっと違った。怪しく危険なキナくさい団地だが、ちゃんと仕事を紹介され、しっかり職を得ている。荒っぽい連中とは一応「距離」があって、見張りの「ヨソもの青年」と親しく話をしてはいたが、「われ関せず」的なポディションで「共存」をしていた。

妻も「介護」の仕事を得ている。そこは「リーダー格」の男と、その父の家。この男が結構「紳士的」だから、逆に戸惑った。もっと「悪い奴」で、それこそ妻をベッドに押し倒すようなことをするんじゃないかと、思ってはいたんだが。

それでも頻発する発砲騒ぎに、ディーパンらは自らバランスを崩していった印象だ。それが故郷の内戦の記憶を呼び起こすものとして描かれ、それから逃れるように、白線を引いたり、駅へと向かったり。

あまり感情を表にしないディーパンと比べて、妻のこころの動きに合わせて、私たちは映画を見る。(仮)の夫、(仮)の娘。その距離が近くなったり、離れたり、不安になったり、嫌いになったり。その絆は危うい。

そして銃撃事件。助けを呼ぶ妻の電話に、ディーパンは「戦士」に戻る。「抗争」に明け暮れるような連中と、歴戦の猛者との、「差」は歴然で、ためらいなく的確に敵を倒してゆく。それこそが「闘い」の2文字だ。

最後の「まるで夢のような幸福な時間」。じつはこのシーンは「左側通行」だ。つまり、無事イギリスへと移り住むことができたということであろうか?

(評価:★4)

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