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[コメント] ブルー・バイユー(2020/米)

何気なく見た映画だったが、これは力作。映画に一つの芯が貫かれている。アメリカンドリームを幻想に追いやる哀しき現実がそこにある。
セント

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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韓国からアメリカへと養子縁組が盛んだとは聞いていたが、ここまでその中身がいい加減で、過酷だとは思わなかった。主人公の青年は3歳で捨てられアメリカに渡るのだが、ただただ苦しき人生を背負い込まなければならなかった人生が、重く我々観客にのしかかる。

チョンの視点はまっすぐだ。彼の視点はすなわち観客の視点に重なるのだが、まぶしいぐらい直球だ。彼の生い立ちは母親から殺害されそうになるという暗い記憶を宿してはいるが、それが解消されるのも、自分と同じ立場の義理の娘の心情を思うからであろう。

養子縁組と並行して、難民としてアメリカに生きるベトナムの父娘の生き方も、シンメトリーとして描かられるが、この親子の泰然と人生への流れに身を任せる描写もずんと身に染みる。違う船に乗った身内は難破して死んでいるのだが、くよくよしてはいない。そこには深淵なる仏教観を感じる。

ラストの家族の絆を確かめるシーンは、そりゃあ泣かされるでしょう。あの、実の父親が人間の原初的な愛に気づく部分も感動的だ。

アメリカで生きるということ、様々な矛盾と闘いながらも、人はファミリーを憩いに、紡いてゆくことで日常を生きてゆくのだろうなあ。いい映画でした。

(評価:★4)

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