こういう映画は作るのが難しい。

逃亡が成功したらしたで「ご都合主義」と言われかねないし、失敗したらしたで「負け戦の美学に酔っただけ」と言われかねない。成るも地獄、成らぬも地獄の難しいジャンルだ。だからこそ、何らかの突出（特に映像面で）が欲しい。確かにハギスのバランス感覚は今作でも十分に発揮されているが、それだけではつまらない。

病院、エレベーター、駅、空港。これほどの舞台が整っていれば、例えばデ・パルマなら（バランスを犠牲にしてでも）何か魅せてくれたはず。『スリーデイズ』は良く出来てはいるが、何も魅せてはくれなかった。『カリートの道』は駅シークエンスのためだけに（「だけに」ってこともないが）今でもたまに観るが、『スリーデイズ』を再び観ることはおそらく無いだろう。

クロウの演技に関して言えば、奴の能力からすればこれぐらいは当然の出来であって、今更賞賛するほどのことでもないし、むしろ主人公の心労を考慮すれば一般人設定とはいえ少し肥え過ぎなのではないかと思えた。