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[コメント] チョコレート(2001/米)

「白」と「黒」と「愛」と「憎」と「情」のグラデーション。「黄」は蚊帳の外で寂しいぜ。
Lostie

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







意図的な手ブレ撮影などの導入を避け、安易な臨場感の獲得を拒否するような(つまりアクシデンタルに作品が良くなることに期待しない)、軽々しくない姿勢に好感。(状況・経緯などを)描く描かん、(音楽を)鳴らす鳴らさんの判断もなかなか適切だ。結構偶然も重なっており、そういった意味では興醒め要素も少なくないはずなのだが、それでも「ご都合主義」と感じさせない演出力と、役者の演技は素晴らしい。

欠点を挙げるとすれば、クンニされて「ええわあ」というハル・ベリーの表情をじ〜〜〜っくり見せつけられて、コレどういう表情で鑑賞すればいいんだろう、と困ったことぐらいか(半笑いで観てもアレだし、しかめっ面で観てもアレだし)。完成度を考えれば★5でも良かったんだが、悩んだ結果、かなり★5に近い★4ということで・・・、地味っちゃ〜地味な映画だし。

終盤、レティシアはハンクが自分の夫と顔見知りだった(つまり処刑に「関わった」可能性が高い)ことを知る。怒り狂うレティシア。その怒りは「彼は私を騙したの!?」という疑念と、「私は何をしているんだろう! 自分の夫を殺した(と言えるかもしれない)男に体を許してしまった!」という後悔の念(本人からしたら「汚れてしまった」ぐらいにさえ思ったかもしれない)が入り混じった怒りだろう。「愛」と「憎」が溶け合う。

そして、「チョコレート・アイスクリーム」を買って帰ってきたハンク。虚無の表情で迎えるレティシア。問い質すのは時間の問題だろうと思った。その返答次第では殺(や)っちゃうんじゃなかろうか、とも。だが、墓が彼女の目に入った。彼の「息子」が眠っているであろう墓が・・・。オレにはラストのレティシアの表情は「ああ、私たち、やっぱり同じようなもんか・・・」という表情に見えた。「(「愛憎」と「情」が溶け合って)もう、何が何だか・・・、でも、しばらくはこのままでいたい」という表情に見えた。いつまで保(も)つかわからない、いつ溶けて無くなるかわからない、そんな「甘い」関係だとしても。

*******

レティシアが指輪を質屋に持ち込むシーンがあるが、あのシーンがわざわざあるということは、あの指輪は「結婚指輪」に相当する(つまりそれを売るという事は、死んだ夫への思いを断ち切る決意を意味する)ものなのだろう。そして「車」をもらったささやかなお礼として、レティシアは白いカウボーイハットをプレゼントしようとハンクの家を訪れるのだが・・・、出たよ、「仕掛ける気」マンマンの親父が・・・。頼むから余計なこと言うなよ! 絶対言うなよ!

「なあ、お嬢さん」

! ・・・このジジイ、案の定仕掛ける気や! 

「タバコはあるかね?」

ホッ・・・、疑ってすまなかった。さすがに息子の「友達」を侮辱するほど趣味は悪くないんだな。

「こんな帽子をもらうとは、よほどのことだな」

そうそう。「よほどのこと」なんだよ。わかってんじゃん。

「クロとやってこそ男だ」

そうそう。クロとやってこそ・・・、ってバカヤロウ! ・・・と、思わず慣れないノリツッコミをカマさざるを得ないシーンであった・・・。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)サイモン64[*] けにろん[*]

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