[コメント] 悲情城市(1989/台湾)
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日本の敗戦から始まり、抗日運動の激しさは描かれないし、急速に発展する台湾の貨幣経済の裏側で、破壊された農村や、大量の都市労働者のことを思わないではいられない。この物語にはそのような階層の人たちは登場しないかわりに、この4人の兄弟の生き死にが、台湾の悲しみを象徴している。
国民党独裁のもと、台湾では、失業問題が深刻化し、治安が悪化していくなか、反政府運動が成長すると同時に弾圧も激しさを増す。運動にくみしたとして逮捕されながらも、自分が銃殺を免れたわけを考えると、四男・文清はひどく落ち込む。何もかも捨てて、ゲリラ活動を続ける親友をたずね、自分も合流しようとしたが、追い返される。国民党による弾圧の嵐は、ついにその親友をものみこんでしまった。このような形で、インテリ層をはじめ、相当多くの人が抹殺されていったが、その運動そのものは、台湾の歴史の中でどのように考えられているのか、現代にいたるまでにどのような流れをたどっているのか、興味深いところだ。
いつでも、自分の身を案じ、慕ってくれた、寛美との結婚。写真館を経営しながら暮らす四男・文清のつかの間の幸せを引き裂いたのも、大陸からの新たな支配者だった。夢中で筆談を交わす寛美と文清の暖かく静かな交流が、殺伐とする物語に白い小さな花を添えていた。それもはかなく、国家の暴力に踏みにじられていく。
最後の家族写真を撮る前に、念入りに髪を直す文清が、別れを予感していたんだなと思うと、出会いから別れにいたる二人の姿がローレライのメロディーとともに強烈に思い出される。トニー・レオンは、きっとこの文清のような人だと思えてしまうことを評価して、この点はトニーに。
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