電車を止めて、力尽きて倒れかけるトビーを支える乗客たち。そして運動会の大玉転がしよろしく、車内の中央に彼を運びそっと置くシーンはあくまで優しくて、完全無欠ではないヒーローへの愛に溢れていた。くそぅライミめ。だが性根の腐った俺はその程度では泣いたりはしない。疲れ果てたトビーをかばってドック・オックの前に立ちふさがる乗客たちの勇気にしたってそうだ。ざまあみろライミめ。しかしライミはヒーローものの映画でもっとも効果的な泣かせるシーンを持っていやがった。

「誰にも言わないよ」おずおずとマスクをトビーに渡す少年の一言に俺の涙腺もう限界。

僕の世代は円谷プロの全盛期だったし、東映キャラも負けていなかった。そして僕は、あの街は作り物でヒーローの中には人が入っているのを知っていた。だが彼らへの愛情は尽きることなかった。だからあの少年の気持ちが痛いほどわかる。正体がわかっていたって、ヒーローは決して色あせないのだ。

あと前作に続いて、キルスティン・ダンストの評判がすこぶる悪いが、あれはナイスなキャスティングだと思うぞ。あれが純情可憐で献身的で一途な（加えて美人）だと、かえってヘンだ。移り気で浮気っぽい俗物なんだけど、ふと我に帰ったとき、思い出すのはいつもたった一人の人っていう女だから可愛いのだ。しずかちゃんじゃダメなんだよ。白鳥沢レイ子（知ってる？）だからいいのだという俺はやっぱへそ曲がりか。

僕は前作のレビューでも、「日本版リメイクを作るなら主演はえなりかずきだ」と言ったが、今作を観てあらためて再認識した。