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[コメント] ホワイト・オランダー(2002/米=独)

久しぶりに劇場で「これだ!」と言う映画に出会って、帰宅後も興奮が冷めなかった。 2003年10月17日試写会鑑賞
ねこすけ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







ダメだ、なんだかレビューがまとまらない・・・。

事件を要約するとこうだろ?

母が毛嫌いしていた男が居た。しかし、母はその男と親密になり、しばしばデートするようになった。だが、数日すると男は会わなくなったので、母は男の家におしかけて話をした(結果的にセックスをした後、「これからデートがある」といわれて追い出されただけ)。

怒った母はその男のPCのファイルを全消去。男はその中に執筆し終わったばかりのエッセイの原稿があったのでぶち切れて主人公の家に殴り込み。ガラスを割って新入しようとした所母がナイフか何かで男の手を切る。(ここは映画の中で象徴的に描かれてたかな?)

まぁ、ハードディスクのファイルのどっちが先かは定かではないが、母は娘を連れて「ホワイトオランダー」を買い求める為にメキシコへ向かう。勿論理由は男を殺す為である。

そして、男を殺すも母は捕まり、娘は養護施設へ。あとは映画で描かれたとおり。

整理しても、しなくても分るとおり、母はバカなのだ。自己中心的で、「愛」と言う物を全く持って信じていない。それなのに愛してしまうも、結局裏切られ、(まぁ過去がオーバーラップでもしたんだろうか)陰湿な行為に出る(データ消去&殺人)。しかし、バカではあるが頭は良い。恐らく、頭が良いが故、子供にそれを伝えようと試みた末、それが気付かぬうちに独裁的な母親像に変化してしまっていたのであろう。

母は既に自己を確立し、タフな女性であった。娘は幼い頃から(この映画では一時期を除くんだが)、母親にそればかりを教え込まれていたので、結果的に自己を「植えつけられた」だけで、それは「自己」ではない事に気づく。

正直あまり期待はしていなかった。元々、別の試写会で外れてしまい(その時はレネー・ゼルウィガーが目当て)、劇場でも見るのも面倒くさかったので敬遠していたら、たまたまビデオレンタル開始にあたって特別試写会。マジに感謝感謝。この試写会では『スパイダー・パニック』も『ル・ブレ』も見たので、本当に感謝してます。

さて、今回も当初と同様にレネー・ゼルウィガー目当てで見に行ったので、ロビン・ライト・ペンだのミシェル・ファイファーなど出演している事すら知らなかった。さらに、ストーリーどころか試写会数日前に人に「女性向けの映画かなぁ・・・」と言われるまで、その事すら知らなかったこの映画。

前知識、期待ほぼ皆無の状態で見に行った。

前半、と言うかクレア(レネー)の家に預けられるまでの過程は、何か話が散発的ではあったので、話を掴みづらくはあったが、何か惹きつけるものがあった。

その後の展開、クレアの家に預けられてからの話は一気に面白くなる。そして、それまでの前半部分も少しずつ思い出しながら重たくなっていき、そして3人目の義母の所で全てがはじけた(それは彼女の素行に現れている。ごつい服着て娼婦みたいに振舞いながらも、セックスする訳でもなく自分を確立している)。

この映画の母親は、どこかエド・ゲインの母親にも似ている気がする。独裁的で、息子(娘)を支配する。エド・ゲインの異常性はそうした物から生まれたとも言われている。成長する過程でやはり母親(もしくは父親)の影響と言う物は多大な物で、主人公も母親から影響を受け続けてきている。

故に、母の独占から手放され別の家庭を知った瞬間、自己を見失ったのだと思う。母はいつも「他人(神)を信用するな」と言い放ち、娘を自らと同様のアーティストの道に進ませようとし、日々”洗脳”し続けた。結果、別の家庭とのギャップに戸惑いながら、今までの自分が”洗脳されていた”事実に気付く。

彼女はまず、ロビン・ライト・ペン扮する女性の家に預けられる。そこで、父親を感じたのか、それとも彼女こそが”ホワイトオランダー”だったのかは知らないが、「おじさん」に何か惹かれる物を感じる。同時に、家庭の崩壊、娘の母親に対する反抗(=主人公がどうしてもできなかった行為)を目の当たりにした上、嫉妬され撃たれた。

ここから、一度養護施設に戻された後、今度は幸せな家庭に連れて行かれる。この脚本はこういうメリハリを上手く使っていると思う。そして、この2人目の義母のエピソードが一番深く感じるのもその為であろう。

今まで母親に”個性を植え付けられて”生きていた彼女が、壊れる家庭を目の当たりにした直後に、母親が忌み嫌っていた幸せで、悲観主義の弱い女性の下に預けられる。ここで愛を学び、同時に母親の独裁に確信を持つ(つーか、彼女を自殺に追い込んだ辺り、この母親はもしかするとレクター博士並なのかもしれないな)。

そして3人目の義母は推薦された「幸せな夫婦」ではなく(恐らく自分が壊してしまう、と言う恐怖もあったのだろう)、一人身のケバイ女性を選んだ。自己嫌悪もあっただろう。

そんな彼女が母親と縁を切ることを望むも、母親は「血が繋がっている」と言い放つ。しかし、最後に母は娘の証言を拒んだ。それが母の愛だと言う事で、初めて母は娘を理解できた、と言う事だろう。何かラストシーンよりも、あの法廷の母の無言の愛には胸を打たれた。

自己中心的な母により抑圧された家庭で育ち、そこで自らのアイデンティティを確立した、と”思い込まされていた”少女が、「反抗」を知り、「崩壊」を知り「死」を知り、自己を確立し、そして「愛」を知り、(母親に)分らせた。

こんな言い方は良くないかと思うが、これはエド・ゲインが母親から離れて、いっぱしに成長するまでの物語、と言う感じだろうか。

あぁ、レビューがよくまとまらない上に無駄に長く・・・(汗

最初はパっとしない女優だと思っていたが、話が進むにつれてどんどん成長している主人公。そして演技合戦。やはり良い演技を生み出すのは脚本なのだと思った。

ちなみに・・・

■音楽は『アメリカン・ビューティー』の人。劇中流れる音楽がずっとどこかで聞いた事あるなぁと思っていたら、そうだったのね。なんだか音楽同じじゃない?(笑)

■流星群を見ている時の「星を見てくる」と言ったのは明らかに誤訳。俺はシャレかと思って笑ったけど。けど、あの「スター」というネーミングもそれなりの意図があるんだろうなぁ。

しかし、いい映画だったなぁ。そして中身の無いレビューだなぁ、これ(泣)

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)プロキオン14[*] きわ[*]

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