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[コメント] バトル・ロワイアルII 鎮魂歌〈レクイエム〉(2003/日)

まんま『スターシップ・トゥルーパーズ』なアクション。どうにかしてよ・・・そりゃバーホーベンが偉大だって、事はいまさら言われなくてもわかってるけどさ。 2003年7月19日劇場鑑賞
ねこすけ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







まずは深作欣二監督のご冥福をお祈り致します。最後まで全力投球の真っ向勝負で撮影し続け、無念にも途中で降板となった彼の熱い思い。だが、そういう主観的な感想では、やはり監督含め、スタッフ一同に申し訳ないだろう。だからその様な主観ではない、いつも通りの作品を見る時の主観でこの映画を評価する。

元々、ある程度の嫌な予感はしていた。前作のヒットだって、「中学生同士が殺しあう」と言う過激な内容と国会で議論させる、と言う前代未聞の宣伝方式(あれは宣伝だろ?)により、中学生以下が激しく興味を示し、そして激しいアクションシーン等から絶大な支持を得た結果、あれだけのヒットになったのであろう。(俺には前作は「アクション」で成功したのであって、決して「内容」で成功したとは思えない)

そして本作。公開前の宣伝には「今度は戦争だ」とまるで『エイリアン2』のキャッチコピーの様な物を貼った続編の新ルールは「七原を殺せば勝ち。爆弾は同じ出席番号と連動していて片方が死ぬともう片方もBOMB。」と言う意味の分からないルールだった。

ここで思い返して欲しい。前作『バトルロワイアル』は、確かにアクション描写に走りすぎた面もあったが、中学生同士が突然不条理な殺し合いをさせられる、と言う非日常的な不条理の落とし穴に突き落とされ、絶望の中で狂気に走る者、必死に「大切な物」を守ろうとする者、と言う絶望の中にある一筋の希望の光を描き出している作品だった。そして「人を信じる難しさ」と「大切さ」等々、ある程度の描くべき物は描けていた。(かといって、下手糞なクラシックの多用や、臭い台詞の連続等々、決して良い作品ではない事は明白ではあるのだが、退屈させない展開と、パワフルな暴力描写等、監督の手腕によってある程度見れる作品になってはいる。ただ、それで良い訳は無いのだが・・・。)

要するに、「バトルロワイアル法」の重要な点は、「仲間同士で殺しあう」と言う箇所にあるのだ。今作の場合、仲間同士で協力し合って一人を殺す、と言う事を目的としている。これでは、政府が子供達に「バトルロワイアル」させる理由が全く無い。子供たちの養育費が無いから殺し合いをさせるだぁ?なら、なんで最後は大人が突入してんだよ。っていうか、首輪を連動させたら一度に二人死ぬから効率悪すぎるではないか。しかも、元々BR法って「良い大人」に成長させる為の法律じゃなかったのか?これじゃただの徴兵制度じゃん。

それに、序盤から次々と氾濫してくる臭い台詞の数々。物語が全く盛り上がっていない序盤でそんな物を叫ばれても何も感じないし、下手にメッセージのスケールを大きくし、世界規模にしたせいで映像が、そして演出が満足に追いついていないので、安っぽい戯言にしか聞こえない。さらに、この映画って「生徒一人一人の死に様を通して」メッセージを描き出すべきではないだろうか?後半の臭い台詞回しに、前半の一挙まとめ殺し(?)。特に上陸シーンのボートで一気に爆死するのってただの脚本の手抜きじゃないのか?挙句の果てに、「生徒一人一人の死に様」を通して描き出したのは「戦争の悲劇」だ。そんな物BRを通じて描く必要があるのだろうか?これは一人一人の「中学生」がぶつかり合って、絶望の中で自らの中の希望と言う名のアイデンティティを確立しながらゲームに飲み込まれる話なのだよ?今回は、前作以上に情けない脚本だった事が見えてくる。

それにメッセージも「反米」ってな感じなのだが、どうしてそこまで大きくする必要性があるのだろうか?いいじゃないか、前作で終わっておけば。アクション描写は全てパクリ、そしてストーリーは破綻し、娯楽映画に大切なカタルシスどころか、生きる難しや、その他のメッセージ等の曖昧なこの映画。撮る必要性が皆無である。

大体中川典子の登場がラストシーンだけ、と言う意図も不明。この女、一体今までどこに居たのか、と。それに七原の行動だって闘っている様には全く見えないし、話を「mission」毎に分けてしまったせいで、観客に「これはゲームです」と訴えている様な物。そんな事したら(バカな)観客が「これはアクション映画なんだ」と勘違いするじゃないか!それに冒頭のノルマンディ上陸作戦もどき。まんま『プライベート・ライアン』をしやがって、アホじゃないのか?さらに装備や音楽等は『スターシップ・トゥルーパーズ』のパクリっぽい箇所がちらちら。クライマックス、三人が迫ってくる特殊部隊に必死にファマス(&AK47)で応戦しているシーン。あれなんて、『スターシップ・トゥルーパーズ』の砦に立て篭もってバグズを迎え撃っているシーンとまんま同じなのだ。銃の撃ち方も、ほとんどがそっくり。ちなみに、ラストのミサイル爆撃は『ザ・ロック』ですな。つーか、よく考えてみたら話し自体もどことなく『ザ・ロック』っぽいなぁ・・・・。

って、おい!それでいいのか?

全体的に見て、映像に勢いも無いし、火薬だけで迫力を出しているような物。アクションシーンは情けなく、脚本もたいしたことない。演出は前作みたいに下手なクラシック垂れ流しているのだが、今作は重要な二箇所のシーンでで同じ曲を使う。耳障り極まりない。おまけにメッセージだけが一人歩きして映画のバランスが破綻している。

まさしく駄作。前作が傑作に思えるほど酷い。

そして一番酷かったのがオープニング。カタカナ表記で『バトルロワイアル2』なんてテロップがでた時は爆笑しちゃいましたよ。あまりのダサさに。

結局、アクションシーン、メッセージ、展開。全てにおいて嫌悪感しか抱けないほど酷い出来栄え。唯一の救いは、竹内力と、北野武くらいのもの(北野武のシーンは本当に良かったと思う)。

しかし、忍成修吾がまた中学生演じてくれるとは思わなかったな。よほど好きなんだなぁ、不良中学生(絶対違)

(評価:★1)

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