コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 六月の蛇(2002/日)

雨。愛。青。蛇。カメラ。 2003年9月14日劇場鑑賞
ねこすけ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







塚本晋也の映画は、実を言うと劇場初体験。『バレット・バレエ』は見逃してしまったのだ。官能ドラマって事で、塚本節は期待していなかったが、やはり冒頭の「怪獣シアター」のテロップでは思わずにやけてしまい、その後、’やつ’が登場する事を期待せずにいられなかった。

予告の地点で既に興奮は絶頂にまで達していた。美しい音楽と美しい雨の映像。しかし、官能ドラマであり、且つ「愛の物語」である本作。いつもの派手な塚本節はあまり期待はしていなかったものの、作品の出来には期待していた。

前半の塚本晋也映画とは思えないゆったりとした展開。音楽も映像も落ち着いているが、後半は超加速的に塚本晋也的に展開していくこの物語。少しずつ追い詰められていく妻。秘密を知って驚愕する夫。排水溝に流れ込む雨水。カウンセラーをしながら、夫の心は全く理解できず、夫婦であるのに、結局他人。所詮他人なのだ。

「心の底からやりたい事」を内側に押し込んで窮屈な毎日を過ごしながらも、夫ではない男に理解され、夫ではない男に助けてもらう。夫は居るだけであり、本当の「理解」はない。秘密を知った時、どうしようもなく何も出来ない夫。

クライマックス。例の如く暴力とサイケデリックな映像と(かすかにいつもの派手な音楽も・・・)雨で満ち溢れるこの映画。クライマックスには確かに塚本晋也、と言う映画監督の力量を痛いほど感じた。確かにこの監督は凄い。だが、なんだろう、やっている事は、ストーカーの言いなりになりながらバイブを突っ込んで街を歩いてみたり、ミニスカートでふらふらするだけ。なんかなぁ。普通じゃん、この展開。まぁこの「普通」の展開があるから後半の、妻の「やりたいこと」の「解放」シーンの鮮烈さがまた凄いのだが。

最終的に夫と妻とのセックスシーンに行き着く。ここにきて「肉体と肉体」のセックスではなく、心の接触になる。これが塚本監督の描きたかった本当の愛か?けど、このあと妻は死んじゃうんだろ?

死ぬ前に「したいこと」をして死ね、って事か?けど、俺はこの物語を「生と死」の物語ではなくて、「理解の愛」物語だと思う。ここでの「死」の原因は乳ガン(だよね?)だけど、その原因として劇中で「お前の妻は修道女かぁ!?」って言う台詞がある。要するに、乳ガンを通して塚本監督は「生と死」を描こうとしたのではなく(いや、少なからずある程度、生と死を描いているとは思うけど)、妻を本当に理解しきれて居ない、と言うか夫婦なのに所詮他人であり、理解しあう事ができて居ない、と言う事を表現しただけに思える。

だから、やっぱりこれは愛の物語でしょ?

それにしても、宣伝文句の「一緒に地獄にいきましょう」という台詞。劇中では案外さらりと言われてしまったので、びっくりした。

所で、どうして指定なしなの?映倫さん。

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (1 人)sawa:38[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。