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[コメント] ゲームの規則(1939/仏)

恋愛と友情とお節介
ルミちゃん

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







恋愛と友情が、交互に織り成すように描かれるこの映画、恋愛と友情に関しては描かれた通りとして、もう一つ、狩猟のシーン、残酷と言う事柄が浮かび上がってきます.

伯爵夫人.自分に恋し焦がれて、大西洋横断飛行の冒険をした男に、彼女は会にも行かない.残酷にふってしまった. ラストを先に書けば、飛行士の男が、オクターヴの代わりに撃ち殺される.密猟人の男がこう言うのだけど、「ウサギと同じように」と. 伯爵には結婚する前から愛人が居て、周りの人間は皆知っていたのに、伯爵夫人には黙っていた.伯爵夫人は、夫だけでなく、周りの皆からも欺かれて来たのね.「君のためを思って」、これはオクターヴの言葉なのだけど、彼女は友情という感情によって、皆から騙され続けてきたことになる.残酷なことなのね. 伯爵夫人は、飛行士に私を連れて逃げてと頼み、オクターヴにも一緒に逃げようという.彼女が一番浮気者なのかと思ったのだけど、これは違うみたい.彼女は飛行士に、今すぐに一緒に逃げようと言うけれど、飛行士は伯爵と友情を持って決着をつけるという.彼女にしてみれば、自分を欺いてきた友情より、恋愛の方が大切.だから必要に、今すぐ二人で逃げようと言うのね. 伯爵夫人とオクターヴも、飛行士の場合と同じことが言える.そして、オクターヴもまた、恋愛よりも友情を重んじた結果が、残酷な結末を招くことになる. オクターヴは逃げ出すように館を去るのだけど、彼は結果として、伯爵夫人との恋愛も、飛行士との友情も、伯爵との友情も、全部を裏切ってしまった. さて、恋愛と友情を描いたこの映画、終わってみればオクターヴの友情とは、単に、おせっかいに過ぎなかった.おせっかいが悲劇をもたらすのね.

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友情、信義、礼節、そうした生きて行くに当たっての規則、恋愛とはそうした規則に囚われない自由なもの.の、はずなのだけど、貴族の社会ではそうではなく、恋愛よりも規則の方が重んじられる(らしい).夫婦が寝室を別にする、この感覚がその典型と言って良いのでしょうか.けれども、恋愛に社会常識、モラルと言った規則を押しつけて考えるのは、決して貴族だけの話ではない.

飛行士アンドレは、愛する人のために飛んだのに、彼女が出迎えに来ていないと怒った.伯爵夫人クリスチーヌは、夫の浮気、三年間欺かれ続けてきたことを知った後は、誰彼となく愛を求める.良かれ悪しかれ、これが恋愛の本来の姿. 小間使いのリゼットは、夫と同居する生活より、伯爵夫人に仕える生活を当然のことと思っている.オクターヴもまた、自分を寄生虫と言うけれど、貴族社会を正しいものとして、それに頼って生きている.

リゼット、オクターヴ、この二人は貴族ではないけれど、彼らは恋愛よりも規則を重んじる、その結果として、伯爵夫人を三年間欺き通すことになった. 二人の他方として、リゼットの夫の森番と、密猟人の男が描かれると言って良いでしょう.彼らもまた貴族ではないけれど、オクターヴ、リゼットと違い、規則よりも恋愛感情を大切なものとした.森番は貴族に仕える仕事をやめてリゼットに一緒に暮らそうという.夫婦が一緒に暮らす事を考える、当たり前すぎるほど当たり前のことなのね.密猟人の男も、気に入った女を見つけると誰にでも手を出し、もめ事を起こす.これも、ごく一般的な感覚と言って良いでしょう. 伯爵は、もめ事を起こした森番と密猟人二人を、信義に従って首にしたけれど、もめ事の元になったリゼットについては、何も考えなかった.恋愛感情を考える事は全く無かった. 森番と小間使いのリゼットは夫婦なのに、全く離れ離れの生活、悲劇としか言い様がない事実なのだけど、妻のリゼットを含め他の全員が悲劇と認識しない.主人の命令ならば、それが当然のことのように思い込んでいる、こうした貴族社会の認識が、最後の悲劇を引き起こす要素であった.密猟人の男と森番とリゼット、この三角関係の結末が、最後の悲劇の引き金となる.まさに猟銃の引き金を引かせるのだけど.

ちなみに、伯爵と飛行士この二人は殴り合いの喧嘩の末、飛行士と妻が愛し合っているならと、身を引くことにした.礼節よりも恋愛を重んじた結果とと言える. 男女の幸せをお金で考えるのも、規則なのでしょうか.リゼットの言葉と共に、友情によって、クリスチーヌを飛行士アンドレに譲ったオクターヴ.二人揃ってお節介.書き加えればオクターヴよりもリゼット、彼女が伯爵夫人の幸せを考えるより、自分を好きになった二人の男の事を考えさえすれば、この悲劇は起きなかったと言って良い.

友情、信義、礼節、そうしたものがなんら悪いわけれはない.けれども、恋愛にそうした規則を押しつけることがお節介であり.そして悲劇を招く.

(評価:★5)

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