コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] LOVERS(2004/中国=香港)

チャン・イーモウには、最後まで女性を撮るときのようなテンションの高さを維持してほしかった。
ナム太郎

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







やはり冒頭のチャン・ツィイーの舞がよい。このシーン、途中からはアンディ・ラウとの殺陣のシーンへと変換していくのだが、その舞のリズムが殺陣のリズムへと転用されていく呼吸は全く見事としか言いようのないものだった。また色彩豊かな背景や太鼓などの小道具の使い方も、この殺陣を画的に盛り上げるのに一役かっていて秀逸だった。さらに竹兵との闘いも、竹林という規律的な美しさの中で、竹槍という非常にシンプルな武器を有効に用いて見事であった。

しかし、中盤までのこういった見事な展開も、終盤になってラウがしつこく絡んでくるようになってからは、緊張感も画的な見せ方も一気にトーンダウンしてしまった感が否めない。

特に最後のあの空虚感ただよう金城ラウの決闘のシーン。確かにイーモウは女性を撮るときしかその独自のテンションを保てない人であるが、それにしてもあのグタグタな演出はどうかと思う。懸命に太刀をふるいながらも、一刀必殺といった緊迫感がまるで感じられない殺陣。これが全く撮れない人ならまだしも、先に述べた冒頭の舞との見事なコラボを観ているものからすれば、どうして最後クライマックスにもう一度あのテンションで撮れなかったのかと正直歯がゆくてならなかった。

またこのシーンで途中から雪化粧の中での闘いに変わっていったのも、ロケの都合とはいえ個人的には致命傷であったと思う。特にあの雪の中途半端さ。あんな無様な画の中で決闘させるくらいなら、いっそのこと背景もCGを使ったほうがよかったんじゃないかなどと真剣に考えてしまった。

***

おまけに(こんなことは言っても仕方がないことだけれど)最後のよみがえりも、あれじゃまるで『ターミネーター』だ。まぁこの映画でのツィイーの強さは、確かにそれに匹敵するものがあったけれど。

(評価:★3)

投票

このコメントを気に入った人達 (1 人)けにろん[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。